2021年8月のテーマ

「わんこが活躍するミステリー」

第二回は、

「四つの署名」

コナン・ドイル 作、延原謙 訳

新潮文庫、1953年発行

 

です。

 

シャーロック・ホームズもので犬が出てくる話といえば、「バスカヴィル家の犬」が真っ先に挙がると思います。

でも、この「四つの署名」に出てくるわんこはホームズがその能力を認めている優秀な探偵なんだなあ。

 

わんこの話に入る前に、少しこの作品の話をしたいと思います。

シャーロック・ホームズシリーズの長編四作のうちの一つで、ホームズ物語では「緋色の研究」に次ぐ二作目にあたります。

インドの財宝や過去の罪に導かれる復讐劇が絡んでくる物語は謎に満ちているだけでなく事件の背景がダイナミックで、私としてはホームズシリーズの個人ランキングでは上位に来る作品です。

忘れちゃいけない、メアリー・モースタン登場作でもありますしね。

 

さて、この作品に登場するわんこ、トビーくんの話にまいりたいと思います。

トビー君はホームズ曰く『へんちくりんな雑種犬だが、驚くべき嗅覚を持っている』犬です。

変わった動物をたくさん所有しているシャーマン老人の犬で、ワトソン曰く、毛が垂れていて醜くく、スパニエルとラーチャーの雑種、色は白に茶のブチで歩きぶりはよたよたと不細工…だそうです。

ワトソンは角砂糖をやって仲良くなり、捜査に協力してもらいますが、文章からは、ワトソンがトビーの能力に懐疑的である印象を受けます。

が、しかし、果せるかな、トビーはホームズの言った通り驚くべき嗅覚をもって容疑者の足取りを追っていくのです。

 

落ちている煙草の灰のにおいを嗅ぎ、自ら地べたにはいつくばって手掛かりを探すホームズでも、においだけで長距離を追跡するのは無理、ということで助っ人としてトビーが登場したのでしょうが、彼の活躍が見られるのはこの作品だけです。

ホームズ物では逃げた容疑者の足取りを追跡するお話が数多くありますし、中には自転車のわだちを追っていくというような追跡劇もありますが、そんな時でもホームズ自身で追っていきます。

ホームズによって認められた特定の犬はトビーぐらいだと思います。(もう忘れてしまっている物語もありますし、全部のホームズ作品に精通しているわけではないので、もし違ったらごめんなさい。)

 

物語全体から見ると登場シーンは短いですし、特別にスポットが当たった存在とはいいがたいですが、見た目はさえないけど特筆する能力の持ち主であるトビーはホームズに協力した唯一の犬として、私にはとても魅力的に映りました。

実際、一人暮らしをしていた時にフリーマーケットで手に入れた陶器の犬の置物にトビーと名前を付けていたほどです。

白に茶色のブチの犬の置物でした。

もしうちで犬を飼うとしたら、名前の候補にも入っています。(今のところ予定はありませんが…。)

ちなみに犬の名前候補にはほかにもジョック、ハンニバルなどがあるのですが、この二つの名前に関しては、また別の記事で取り上げたいと思います。

 

余談ですが、イギリスBBCのドラマ「シャーロック」(ベネディクト・カンバーバッチ主演)の中で、このトビーによる追跡シーンが盛り込まれていたのを観た時本当に嬉しかったです。

ちなみに、このドラマはシャーロック・ホームズが現代に生きているという設定で、原作の小ネタなどを盛り込みながら全く新しいストーリーで描かれたドラマです。人気の高いドラマなので、観た方も多いと思いますが、念のため。

 

「四つの署名」の中では、いいえ、シャーロック・ホームズシリーズの中でも、特筆する存在とは言えないかもしれないけれど、やっぱりトビーは特別な犬です。この作品を読むときには、ぜひ、こんなトビー推しの人間がいたことを思い出していただけたらと思います。

おすすめいたします。(*^▽^*)