2019年4月のテーマ

「動物が好きになるかもな本」

第一回は、

「先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!」

[鳥取環境大学]の森の人間動物行動学

小林朋道 作、築地書館、2007年発行

 

です。

 

 

鳥取環境大学の小林朋道先生のつづる、大学内の動物にまつわる事件のエッセイ集です。

先生のご専門は、動物行動学、人間比較行動学。研究室にはたくさんの動物が研究のために飼育されています。ヘビとかハムスターとかメダカ、サンショウウオなどなど。それらの動物が逃げたりするハプニングのほか、自然に囲まれた大学構内で目撃される数々の生き物たちを観察して気づいた面白いことなどが、軽妙な語り口で書かれています。

 

タイトルの「巨大コウモリが廊下を飛んでいます!」というのも実際に起こった事件で、動物好きの小林先生のところに連絡があって、捕獲した後に学生たちと一緒に観察してから森に放してあげるまでのことが書かれています。写真つきで、耳が大きくて他のコウモリと違う、日本でも珍しい種類のコウモリであったことや、コウモリのかわいさなどが語られており、「この人、ほんっっっっとうに動物好きだな~。」ということが分かります。

 

著者の動物に対する愛が文章からあふれ出しているのが感じられて、気が付くと自分も感化されてしまっている…そんな本です。もともと私はわりと動物の生態や生物や自然の分野に関して興味がある方なので、余計に面白く感じたのかもしれません。

 

でも、この本に登場する動物は、はっきりいって、普通の一般家庭で飼育されている割合の低いものが多いです。野生動物の行動を研究されている方ですから、当然と言えば当然です。身近に生息している生き物といっても、コウモリやヘビ、アカハライモリ、ヤギ、ヤツメウナギなんて、いくら私が生き物好きでも、今まで触れ合ったこともほとんどないです。仮に今後触れ合う機会を持ちたいかと聞かれたとしても、躊躇する生き物もいたりします。(ヤギくらいならまあ、だいじょうぶかな。)

 

それでも読んでいて面白い。テレビ番組で生き物の生態を特集した番組みたいに、動物の行動を順序立てて説明してくれる本ではありません。身近にいる生き物と触れ合って観察していたら、面白いことに気付いた。よし、研究テーマとして調べてみたら面白いかも。・・・という感じの本です。つまり、読んでいる方にも、まだはっきりしていないことに対する好奇心が掻き立てられるのです。それが面白い。ちなみに、先生の語り口もユーモラスで面白いです。

 

この本は、「先生!シリーズ」の第一冊目で、その後、何冊もシリーズの本が出ています。取り上げてある動物も、哺乳類から、鳥類、魚類、両生類、爬虫類、昆虫まで幅広いです。

 

ちなみに、鳥取環境大学には、小林先生が顧問をなさっているヤギ部というサークルがあり、文字通り、ヤギの飼育をしています。このヤギたちも、最初は一頭だったのが、年月がたち仲間が増えたり、脱走したり、いろいろとやらかしてくれます。

 

エッセイ本なので、シリーズのどの本から読んでも楽しめるのですが、前述のヤギ部の話などは、何度も出てくるので、順を追って読んだ方が、ヤギ部のメンバーの変遷などが分かって良いかもしれません。

 

犬や猫などのコンパニオンアニマル(人間とともに暮らす動物)が好きという人はたくさんいますし、魚の魅力に取りつかれている、とか、爬虫類が好き、とかいう方もいらっしゃると思います。でもこの本では、特定の種類の動物の話ではなく、自然界に暮らす身近な生き物をこよなく愛す小林先生が、思いもかけない生き物の魅力を語ってくれます。

 

生き物に興味がある方もそうでない方も、この「先生!シリーズ」、ぜひおすすめいたします。