2018年12月のテーマ

 

クリスマスにはクリスティーを!

第二回は、

「終わりなき夜に生れつく」

アガサ・クリスティー 著、乾信一郎 訳

ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 2004年発行

 

です。

 

アガサ・クリスティーのオカルト・サスペンスです。

ポアロやミス・マープルといった名探偵は登場しません。

この物語は、マイケルという青年の独白の形式で描かれている、"マイケルの物語"です。

美しいと同時に呪われた土地とされている<ジプシーが丘>で、彼はエリーという女性と出会い、恋に落ちます。

彼は<ジプシーが丘>に魅了されていて、そこに理想の家を建てて住むことを夢見ています。

呪いの土地で起きる不吉な予兆と不幸な事件。

この物語はラブストーリーであると同時に、オカルト・サスペンスであるという、一風変わった作品です。

そのため、読む人によって読後感はかなり違うと思います。

 

オカルト・サスペンスの要素が気になる方は、呪いや事件の行方を重視して読まれるでしょう。

私はこのお話の、ラブストーリーの要素が気になるので、マイケルの心の動きを探りながら読んでしまいます。

それでも、最終的にはぞっとする怖い話だなと思います。

異なる二本の柱を両立しながらお話を展開していく作者の手腕に、舌を巻きます。

 

というわけで、おすすめポイントは、"トリックだけじゃない。クリスティのうまさを感じてください!"です。

 

クリスティは探偵ものだけが得意だったわけではありません。

さっき、私は"この物語のラブストーリーの要素が気になる"と述べましたが、この本を読むと、「幸せってなんなんだろう?」と感じずにはいられないのです。

マイケルにとっての幸せ。

エリーにとっての幸せ。

そこから転じて、自分にとって幸せってなんなのかな?と。

ラブストーリーの要素があるとはいっても、決して恋愛小説ではなく、ストーリーとしてはサスペンスなんですけどね。

 

クリスティの作品は、名探偵の出てこない、いわゆるノン・シリーズの作品にも、名作は多いです。

寒い冬の夜、暖かい部屋で紅茶片手にぞっとするクリスティーの名作を味わってみませんか?(*^▽^*)