突然の電話

 金曜日の昼過ぎのこと、勤務中の私のスマホが鳴りました。発信元は保育園。もうこの段階で嫌な予感しかしません。
 

「奥さんの携帯がつながらないのでご主人にかけています。同じクラスの園児で新型コロナの陽性者が発生、息子さんが濃厚接触者と判定されました。お迎えにきていただけますか?」

 

突然のことに唖然としている間もなく、たたみかけられます。

 

「このまま自宅待機で月曜日まで過ごしていただき、疑わしい症状が出なければ火曜日から登園可能です。」

 

仕事に忙殺され、電話に出られなかった嫁さんに連絡を取り、迎えにいってもらうことにしました。嫁さんが保育園に着いたころにはクラスで息子くんが最後の一人だったとのこと。クラスの大半が濃厚接触者となっていることを後に園からの通知で知りました。

 

どうするよ?

 濃厚接触といわれても、本人はいたって元気。私もせっかく土日ともに仕事が休みの貴重な週末だったのに、息子くんと遊ぶ楽しい計画が音をたててくずれていきました。嫁さんは土、月と仕事です。私の休日は元気を持て余した3歳児を3日間自宅軟禁するという苦行にかわりました。どうするよ?

 

 せめて朝はゆっくり寝てもらおうと、前夜に金曜ロードショーの「ジュラシックワールド」を最後まで見るという、かつてない夜更かしを許したにもかかわらず、朝6時半には「パパおきて、朝だよ」と逆に起こされる始末。

 

「今日どこ行く?」との毎朝お決まりの質問に

 

「今日はずっとおうちにいるの」とまでは返せましたが、次の質問の答えに詰まります。

 

「なんで?」

 

「病気がうつっているかもしれないから人にうつすといけないので、おうちにいてくださいっていわれてるの」

 

 3歳児にこんな長文がわかるわけありません。しかし、とりあえずどこにも出かけないということだけはわかったみたいです。

 

 嫁さんを仕事に送り出して、息子くんと遊び始めます。最近iPadでYouTubeを見ることを覚えたので、その要求に屈しないように持てる体力とおもちゃを総動員して遊んであげます。

さんざん相手して、こちらがいい加減疲れてきたころ、壁の時計を見上げて絶句します。

 

「まだ10時すぎやん!?」

 

普段であれば公園に連れていくだけで勝手に体力を消耗しつつ時間を忘れて遊んでくれるのですが、家にじっとしていると時計の針がちっとも進みません。

 

うらめしそうに晴天の景色をベランダ越しに眺めていたら、息子くんが一言

 

「おうちのプールしたい」

 

親も準備と後片付けで体力をそがれるという諸刃の剣ではあるが、膠着状況を脱するにはこの提案に乗るしかありません。
 
さあどうですか?
 
すっかり夢中で遊んでくれました。
 
 おかげでなんとか午前中はプールで時間をつぶすことができました。

 

 昼食は息子くんを置いて買い物に行くわけにもいかず、かといって田舎なのでUberEatsのような出前サービスもありません。冷凍の焼きおにぎりを出したところ、プールで体力消耗したのか、おかわりするぐらいにもりもり食べてくれました。

 

食事を終えるとちょうど保育園でのお昼寝タイムとなったので、「お昼寝しようか?」と提案したところ、

 

「寝ないの!眠たくないのっ!」

 

と断固拒否。彼にとって無制限に遊べるボーナスタイムを一刻も無駄にしたくないようです。

逆にこちらに昼下がりの眠気のピークが訪れます。ウトウトしはじめた私の耳元で息子くん、悪魔のささやきです。

 

「YouTube見るの」

 

当初の意気込みはどこへやら、あっさり要求に屈してしまいました。YouTubeといっても検索キーワードにBabyBusと入れた後の画面しか見せていないので、彼はたくさんある番組から自分で選んでいるつもりですが、実際は幼児用の番組「BabyBus」シリーズしか見ることができないというカラクリです。安心な反面、親はこのパンダたちに辟易しているのが正直なところです。

 

いつもなら30分も見せたら切り上げさせるのですが、ついつい1時間近く許してしまいました。さすがに疲れたのか、自ら画面を閉じました。そして再び遊び相手になるようにとまだウトウトしている私を攻撃してきました。そのままソファに引きずり込んで一緒にお昼寝するように抑え込んでやっと寝たのは3時過ぎ。

 
 
寝顔はまだまだ天使!
 

 散らかり放題の部屋を片付け終わったころに嫁さんが帰宅。今度は逆に全く起きてきません。ということは夜なかなか寝てくれないという悪循環が待ってます。

 

 そんなこんなで始まった自宅待機。こうやって文章にしても初日だけでお腹いっぱい。永遠に終わらないのではと思った3日間もようやく終わりました。幸い息子くんは無症状で保育園復帰確定です。

 

考えてみると、

 

運動をさせて、

 

粘土遊びなどのクリエイティブな作業をして、

 

歌や踊りをして、

 

絵本を読み聞かせるなどの豊富なプログラムを毎日用意して、

 

さらに栄養を考えた食事まで出る保育園って

 

神ですね!

 

保育士さんたち、毎日ありがとう。そう実感した3日間でした。