しきたりを大切に

 3月の雛祭りを前に雛人形が子供用品売り場を埋め尽くしている頃、嫁さんが「こういう日本のしきたりはちゃんと教えてあげたいねん。五月人形も飾ってあげたい」と独り言のようにつぶやいていました。『え?要る?高そうやし場所とりそうやし』とその時は心の中でつぶやき返していました。私の生まれ育った実家には雛飾りはありましたが、五月人形が無く、飾る習慣がなかったせいもあるかもしれません。85歳となった母に電話でそれとなく聞いたら「あの時は余裕がなかった」との切ない事情でした。いろいろ調べると五月人形には子供の健やかな成長を願ったり、身代わりとなって守ってくれる厄除けなどの様々な意味が込められていることがわかりました。
 そして、端午の節句が近づくにつれ子供用品売り場は五月人形であふれるようになってきました。マンション住まいなのでガラスケースに入ったコンパクトなもので探しましたが百貨店では平気で15万円とかします。ちょっと良さそうなものだと20万円を超えていました。

「冗談じゃない」
 
その時思いました。トイザらスとか赤ちゃん本舗とかなら安いかもと思って見に行くと、同じぐらいの大きさのケースに入ったものが5~6万円であります。
 
「これなら!」
 
と思ったのもつかの間、よく見ると明らかに安っぽいです。
 
「プ、プラモデルやん!」
 
プラスチックのメッキパーツを多用していてガラスケース越しに見るだけでも百貨店で見たものとは明らかに質感が異なります。いくら価格が1/3になってもこれのために5~6万円ものお金は出せないと思いました。

松屋町筋に

 関西では人形で有名な松屋町筋の人形店街に行けば安く買えるのかな?などと思っていましたが、コロナ禍の影響などで大阪市内への外出もままならず先延ばしにしてきました。そうこうするうちに両家の両親が援助してくれそうな話もあり、大阪の実家に寄った帰りに車でふらっと松屋町筋を偵察してみました。日曜日の夕方、車通りや人通りもほとんどなくとりあえず道端に車を停めてどこのお店がおすすめなのかググってみました。そこで見つけたのがブログ【Love Wife Life】さんの「大阪・松屋町で端午の節句のお祝いの兜を買ってきたので、購入時に気を付けたい点や実際に買ったお店をご紹介!」という記事です。今の私たちが欲していたすべての情報がここにありました!まるでゲームの攻略本を読んでいきなりラスボスの部屋に行くかのように「山本人形」北店の目の前に車を横付けします(300円のパーキングチケットが使えます)。
 車からすぐお店に入れて入口は常時オープンで換気もよくお客さんもいなかったのでコロナの影響も気になりません。お店は創業100年の老舗の「卸」で卸価格で販売していること、「小売り」店との違い、ガラスケースはあまりおすすめしないことなど直前にブログで予習した内容と同じことを跡継ぎっぽい若い娘さんがすらすらと説明してくれました。商品を見ると買値2万円程度の商品でも5~6万円する他店のプラスチック製のものとは格違いの質感をしていました。
 
「これでいいやん!」
 
そう思いましたが、「もっとお買い得なものが奥に」とお店の奥に案内されます。兜と毛氈と金屏風の3点セットには82,500円の札がついていました。
 
「確かに高級感はあるが高い」
 
そう思いましたがとりあえず説明を聞いてみます。
「合わせ鉢」「金沢金箔」「金鍍金」「本革」「正絹」いろんな本物っぽいキーワードがちりばめられた説明に圧倒されます。同じものが百貨店などでは軽く倍の値段するそうです。前から見えない背面にまでこだわりつくしたディティールにしっかりと目を凝らした後、最初に候補にした安い商品をもう一度見てみることにします。
 
「違う!」
 
 最初は全く気にならなかった細かい部分のこだわりの差が歴然です。予算オーバーですが、この差を見てしまうと心が動きます。ここで嫁さんが思いもしなかった一言を発します。
 
「弓太刀をセットにするといくらになります?」
 
プラス2万円強でした。それでなくても予算オーバーなのに!
「弓太刀は自分たちで買ってもいい」「かっこいいやん」とのこと。なんですかそのこだわりは!?
スポンサーとも相談が必要なのでその日はこれでお店を後にしました。
 
 家に帰って、夫婦で相談です。私は82,500円の兜セットに心奪われてしまっていて、嫁さんも同意してくれました。「いいものは毎年飾るのが楽しみになってやっぱり長続きしますよ」という売り文句が頭でループしています。弓太刀と義両親に買ってもらう鯉のぼりをセットにすればもっと値切れるかもという期待を込めて翌日お店に向かいます。
 
 平日でしたが相変わらず通りは閑散としていて、またもやお店は貸し切り状態でした。義父と合流し袖に置く鯉のぼりを選んで、弓太刀をセットにしてもらいます。値引きの相談をしてみたところ鯉のぼりは半額近くに値引きしてもらえましたが、兜のセットは「とにかく特価品なので」と値引きは渋られました。結局値引きはあきらめて会計に進みました。「総額がなんか安い?」と思いながら…。お店はクレジットカードが使えず鯉のぼり代だけを支払って残金は銀行振り込みです。帰る車中で請求書の明細を見て謎が解けました。弓太刀代金がまるまるサービスとなっていたのです。本体価格からは値引きできない大人の事情があるのかどうかは謎ですが、とにかくお得に買うことができました。

大安の日を指定して配送

 商品は後日配送となっていて、到着日の指定も縁起のいい日を指定するようにアドバイスされたため、大安の日にしました。あいにく到着の前日に息子は初めて熱を出しましたが夜に届くころには元気になっていました。

 
 開封は翌日にしました。金属部分などがあるので取り扱いには手袋の使用が勧められていたので薬局で綿手袋を買ってきます。台となる桶部分に兜一式が収納されているため収納は意外とコンパクトです。
 
これが台兼収納の桶
 
開けると中に一式収納されています。
 
刀はちゃんと抜けます

組み立てといっても台に順番に置いて、兜に角の部分を挿す程度の簡単なものでした。弓太刀があるとキマりますね!鯉のぼりも合ってます。
 
金箔の貼られた屏風を背面に置いて完成です。IKEAの奥行50cmの洋服ダンスの上にぴったり収まりました。
 
ここならいたずら盛りの息子も手が届きません。
 
お店で見たとおりの精巧な造りにほれぼれです。
 
「毎年飾るのが楽しみになる」その通りの予感がします。