前記事で、22ステラは同じスーパースローオシレーションを採用していたミレニアムステラ、01ステラと同様のウォームシャフト溝が密になることによりウォームシャフトピンとの摩耗が進むとピンがシャフトの溝の交差角に当たり「カチカチ」となる可能性があることを指摘した。
が、最新のシマノのGフリーボディーを見るとその可能性はないのかもしれない、と改めて気が付いた。
現在のGフリーボディーでは、上図フォームシャフト105はマスターギア軸を跨いでピニオンギア63の上部、リールフット側に配置されている。フォームシャフトは、ピニオンギア-中間ギアL110-中間ギアS108-ウォームシャフトギア70を介して回転する。
Gフリーボディー以前のシマノのスピニングリールではウォームシャフトはピニオンギアの下側すぐ隣に配置されていたため、ピニオンギアはウォームギアを直接駆動していた。
以前の構造では介在するピニオンギアとウォームギアが至近距離で直接接触するために、ギアのサイズの変更に自由度が少なく、ウォームシャフト駆動方式でスローオシレーションを実現しようとすれば、ミレニアムステラなどで採用されたようにウォームシャフトの溝の密度を高くする必要があり、それが経時的な「カチカチ」音の原因になりやすかった。
が、現在のGフリーボディーでは介在するギアが2つ増えていて、ウォームシャフトをより減速して回転させることが容易になっている。ウォームシャフトの溝数を増やさなくても単にウォームシャフトの回転速度を遅くすることが可能なのかもしれない、と思っていたのだが....
シマノの22ステラのプロモーションを見ると気付いてしまった。
中間ギアの軸が更に1つ追加されてピニオンギヤからウォームギアに至るまでにギアが2つ更に追加されている。これはウォームシャフトを現行機種よりどれだけ減速させようとしているかに他ならない。ここまでやるとなるとシマノの執念を感じざるを得ない。
残る懸案事項はラインの食い込みだろう。これがどう解決されたのか、そもそも本当に解決されたのか。
インフィニティ―ループなる所謂スーパースローオシレーションに実釣でネガティブな要素がなく、飛距離アップ、ドラグ動作時の安定したライン放出、スプール上死点、下死点でのコツコツノイズの軽減など実質的なメリットしかないなら、これはダイワにとってかなりの脅威になり得るだろう。
シマノのスプールオシレーションは一部の下位機種のみS字カム方式なのに対し、ダイワは全機種S字カム方式だ。このS字カム方式はドライブギア軸がオシレーティングギアを直接駆動することでS字カムに繋がるスプールシャフトを上下させる構造だ。介在するギアがGフリーボディーを採用したシマノより少なく単純な構造のためオシレーションの減速が難しく、スプールストローク量にも限界がある。
最新のルアー釣りでは飛距離はかなりウエイトの高い要素だ。
ダイワのLC-ABSスプールは逆テーパーの糸巻き形状が標準で、シマノのARCスプールよりライン放出抵抗が大きく、スプールストロークも短いため、現状でも飛距離はシマノがやや優位というのは定説になっている。22ステラを始め今後のシマノのスピニングリールにおいて、トラブルレスでスーパースローオシレーションが一般化し、飛距離の差が更に開けばダイワのスピニングリールは革新的だったモノコックボディーでも補えないほど危機的な状況になる可能性がある。
今後のシマノの下位機種の選択を考えると、22ステラのインフィニティ―ループの功罪に注目したい。まあ、手持ちのリールを数年は使うだろうから余計な心配なのかもしれないけど。