引っ越しの副作用~上~
日没の江ノ島
一人ぼんやりと夕日を見つめ
タバコをくわえながら
チルアウトしていた。
江ノ島と鎌倉のちょうど真ん中あたりに越してきて
ちょうど4ヶ月目かな。
渋谷の街の喧噪から逃げて
もしくは社会という異国の空気に耐えきれず
この町に越してきた。
なんにもないけど
なにかがある。
そう確信している。
「さーて、帰るかな。」
チルアウトしたあとは
清々しい気分が出迎えてくれるものだ。
江ノ電というローカル電車があるものの
それには乗らず
チルアウトの余韻に浸りながら
途方もなく我が家まで歩く。
「なんたってこんな綺麗な景色があるもんかね。
素晴らしいの言葉以外何が言えよう。」
家についたらシャワーを浴びて
買い込んであるビールでもって
晩酌をする予定である。
歩くこと30分
我が家に到着。
ハッ!!!!!!
なんじゃこりゃ!!!!!!
越してきて4ヶ月
段ボールは必要なモノだけを取り出し
あとは段ボールのまま放置されている。
すっかり忘れていた。
グッバイ余韻。
足の踏み場もないとはまさにこのことである。
ほこり
段ボールのカス
敷きっぱなしの布団の下は
ムレにムレてかびている。
「はぁぁ。。。
夢に見た江ノ島付近での生活。
それも引っ越し後の汚さで
喜びを味わうに味わえない。」
?:「ぐっっへへっへっへっへっへ」
「誰だ。
僕は今腹の虫の居所が悪い。
立ち去った方がいいぞ。」
?:「ぐっへっへっへっへっへっへっへっへ」
なんとなく察することはできた。
なんたってこの汚さだ。
虫が出ようが鬼が出ようが。
ただ怖くはあった。
このキタナイ部屋から何者かが出ることで
その出てくるものによっては
僕の全人格を
いや、それが怖いのではない。
同棲していた彼女を
そして両親の反対を押し切って
この町に越してきたこと
それ自体を否定されるような気がしたから。
ただただそれが怖かった。
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