重厚なオケに独唱・合唱が入ったところに激しい振りのバレエとなるとそれは迫力がありました。
宣伝文句で煽りたくなるのもわかりますよ〜。
Kバレエでは2019年に初演、その後コロナ中に配信したとの事ですが
私は全くの初見であまり知識もなく観ました。
観終わって思うのは、まずは飯島さんが素晴らしかった!
クラシックのパは沢山ありながら、オフバランスや身体全体でエネルギーを表す、コンテというよりバランシンぽい振付だったように見えたのですが、
それを自分の中で咀嚼して消化して飯島望未のアドルフが飛び出した!
って感じでした。
アドルフ=悪らしいのですが、役名からも推測できるように、ヒトラーになぞらえていたようです。
それが極悪じゃなくて、まるでチャップリンが映画で演じたヒトラーみたいに、少年の無垢さやおかしみがありました。
それだけにだれでもちょっとしたきっかけで、アドルフに魅入られるように、道を踏み外すんだろうなぁ、と観ていて気付かされました。
だって誰にも手を加えられない自然を全体主義で統率しようとしたり
生きるものを殺したり
愛欲に溺れたりって
日常に溢れてますよね…
そもそも、カルミナブラーナとはなんぞや?と後から調べてみたら
中世に若き修道士達が書いた詩篇集が19世紀に発見され、
そのうち作曲家のカール・エルフがいくつかを取り上げて「初春に」「酒場で」「愛の誘い」の3部から成り、合唱や独唱、バレエと共に上演するようになったそうです。
へぇ〜。
ネットで検索したら2010年に新国立劇場で上演された時に書かれたブログが一番わかりやすかったので、リンクフリーとの事で貼らせていただきます。
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世俗的讃歌だったのがKバレエではもっと哲学的な解釈をしてますね〜。
チラシの文言がわかりやすい
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熊哲がアドルフに魅入られる人間として最初と最後に現れるのですが最初の場面が秀逸。
絡め取られるようになって足取りが重く、苦悶の表情なのがすごく人間的で熊哲っぽくない。
そしてその後ろにいるアドルフが怖い。
飯島さん怖いのよ。
熊哲よりずっと小柄なのに存在感のせいか小さく見えなかった。
そして合唱とオケがその恐ろしさを増幅させるんですねー。
ヴィーナスの小林美奈さんも良かった!
この間のOptのシンデレラの家とは全く違うキャラクターで、元々の華やかな美しさが生かされて圧巻。
しかも清楚さと奔放さを一瞬で演じ変えてるのもすごい。
上体の反りを使う振付が多くて、腰痛くなったりしないのかな…とちょっと現実的な事を考えてしまった💦
サタンの山本雅也さんの暴力性も凄かった。
この方、普段はわりとさっぱりした風貌なのに、踊るといつも華やかですね。
ダビデの堀内將平さんも良かった。
元々好きなダンサーですが、こういう男っぽいキャラクターを観るのは初めてかな。
男性の持つ圧力みたいなものが表れていました。
神父の群舞には井上芳雄・知念里奈夫妻のご子息、井上慈英さんがいるよ、と教えられて見たら
背が高いのに顔が小さくてビックリ。
そして最後に人間=熊哲がアドルフに打ち克つところはちょっと違うかなぁ、という感想。
最初と違って自信に溢れた彼が克己心で悪魔を消し去ったように強く現れるんだけど
男性的で自我が強すぎるなぁって思いました。
でも、人間ではなく人類を超えた力を現したのかな。
もしかしたら熊哲が観客に問いを投げかけていたのかもしれません。
こういう哲学的なテーマはバレエに留まらなくて好きです。
どちらかと言えばOptでやるジャンルだと思うけれど
バレエの方にもそういうエッセンスは出していきたのでしょうか。
そもそも海外のバレエ団ならこういうのもシーズンの中に必ず入ってるもんね。
カーテンコールで出てきた飯島さんは普段に戻って可愛らしく小柄な様子でした。
なんであんなに大きく見えたんだろう…
そして裸足にバレエシューズだったのですが
足には沢山傷がありました😱
以前のように熊哲だから無条件にすごい拍手というわけではなく、やはり飯島さんに大きい拍手があったと思います。
その飯島さんを熊哲が振り回してレベランスさせてて、引っ張らないでっ!と怒る私😆
新国立劇場ではビントレーが60年代に舞台を設定して演出していたらしい。
それも興味深いからまた再演して欲しいなぁ…
曲の中にはレッスンで使うCDに入っている曲もあって驚きました。
メジャーなんですね。
そして今回もN子さんに取ってもらったチケット、なんと最前列でした!
ありがとうございました🙇♀️
存分堪能致しました。
この演目ならうちの家人やバレエは馴染みがないけど西洋史やクラシックに興味のある人もおススメできます。
私もまた観たいです、飯島さんで!