Kバレエのコンテンポラリーダンス公演です。

最果タヒさんの詩「シンデレラにはなれない」と童話「シンデレラ」と現代のヤングケアラーという事象が一体になった作品でした。

最初に最果タヒさんの詩を読んだ時に観たい、と思いました。

HPに載っています↓


愛読者ではないです。

興味のある方で新聞などで読んだことがあるのですが、読むと深みにハマって戻って来れなくなって

普通の人の振りができなくなりそうで避けて来たんですけど

やっぱり惹きつけられちゃう。


そしてもう、観る前からこの着想がすごい、と感激しました。

熊哲が企画とは、やはりすごいクリエーターだな、と思いました。


Optで扱うテーマはいつも社会問題を包摂していて

それを臆面なく扱う誠実さや勇気に感服します。


しかもそれを彼が培った芸術と繋げて表現するって

バレエを超えてますね、アーティストじゃまだ狭いような。


経営者で社会活動家という表現を客観視する立場を取りながら、ダンサーで振付家で演出家という主体でもある。


そして今回特に感じられたのは本人は踊っていないし振付もしていないのにも 彼の意思が強く映し出されていると思うのです。


観る前にここまで頭に巡って、これはすごい作品に違いないと予想。





振付はジュゼッペ・スパッタという振付家。


始まってみたら簡単な小道具?大道具?大きい木枠を使って上手く表現していました。


その木枠は家にもなるしベッドにもなるし、隠蔽にも使われる。


一番最初のシーンでは、綱渡りしているような不安定さをこの木枠の端を使ってオフバランスで歩いて表現していて

観ているこっちがすごいドキドキしました。


そしてバレエのシンデレラで使う、プロコフィエフを一部使っていたのは秀逸でした。


バレ友Aっきーがよく、プロコフィエフは気が狂いそうで好きじゃない、と言うのですが

私もプロコフィエフのロミジュリの音楽は美しいと感じるのに

シンデレラのあの不安定さは心が掻き乱されるので同感でした。

(これには二人共参加した発表会でやったシンデレラが過酷だったトラウマも影響してます😆)


でも、その発狂しそうな不安定さがまさに今回のシーンにハマっていて

きっと熊哲も同じように思っていたのねー!と勝手に解釈🥳


そこに今回の見所でもある、古い家電から作った「電磁楽器」の歪んだ響きが合わさって

コンセプトピッタリの仕上がりでした。


そもそも時の踊りの曲って知らない人が聞いたら現代音楽に聞こえる、斬新な作りじゃないです?

あの、12時が近づく切迫感てすごいですよね。


プロコフィエフ以外は使い古された家電を使った電磁楽器で表現している、和田永さん率いるエレキトロニクス・ファンタスティコスが生演奏していました。


日本人でどんなものにも命が宿っている、付喪神の思想があるじゃないですか。


本来の機能は果たせなくても残った力をアンプで増幅させて演奏者に弾いてもらえば

歪んでいてもまだこんな音が出るぞー!と付喪神が揃って叫んでいるようで

シンデレラの家に渦巻く鬱屈とシンクロしてるようでした。

すごく良かった!


舞踏会のシーンは3回あって、どれもエレクトロミュージックにのせたダンスシーンって感じでした。


ダンスとしてはコンテンポラリーバレエなんでしょうが

ここは音楽と相まってもっとグルーブ感のあるダンスに見せて良かったのではないかしら。


今はダンスボーカルグループやK-POPグループの影響で

レベルが高い様々なジャンルのダンスを目にしているので

生温く見えました。


バレエ団のダンサーだけになめらかだし、人によっては踊りきれていない😅


もっとコントラクション使ってキレッキレに踊ってくれた方が

シンデレラの抑圧とか音楽のパワーが感じられたように思いました。


シンデレラ演ずる小林美奈さんは、いつものクールでシュッとした感じじゃなくて

遠い私の席からは井上咲良ちゃんに見えました。


小柄で可愛らしく、控えめな印象。

シンデレラでした。


観終わってこの作品はKバレエのものというより、これから先色々なダンサーで踊られるものじゃないかと思いました。


キャラクターに合わせて色々なジャンルの人が加わって然るべきですね。


個人的には過去2作品のOptの公演で素晴らしいパフォーマンスだった飯島望未さんのシンデレラを観てみたいという希望があります🥰


8月公演がすごい近所でやるんでもう一度観たいところですが

今年の8月はバレエ公演が目白押しで日程が空いてません。


再演で観たいです。