鍋パーティーから数日後、嵐粧堂に本社からメールが届いた。
いつものミーティングで雅紀がみんなに報告する。
「本社から通達。今週の金曜日、サクライの取引先を交えた新年会をホテルでするから社長と翔くんは出席するように。だってさ。」
「社長ーーっていうと……」
ニノが俺の方に視線を寄越す。
「ん?おっ…………わしか…。」
そーだった、俺社長だったわ。
チームを組んでた時にジャンケンで俺がリーダーになってしまい、そのまま「年長者」という事と肩書きだけだからという事で言いくるめられて嵐粧堂の社長の欄にハンコ押させられたんだっけ。
実際の所、社長としての役割を全く背負わされてなかったから忘れてたわ。
「そっかぁ、そういや去年も何か…行った…ような?でも翔ちゃん……一緒に行ったっけ?」
「俺去年は年始からロンドンに出張行ってたから。」
「そーだよねぇ!俺1人で行ったもん。社長とじーさん以外知らない人ばっかですげー帰りたかった。」
社長ってのはもちろんサクライの社長で、じーさんはサクライの会長。俺を会社に入れてくれた人だ。
「そっか、そうだね。それまで一社員だったのが急に社長になったから(笑)」
「営業してたわけでもないから顧客と顔合わせないし」
「てかほぼラボにいたから社員すら特定の人としか喋ってなかったよね(笑)」
みんな好き勝手に言ってくれるが……
「そーだよ!だから俺嫌だって言ったのに社長やらせるから。」
ふてくされる俺に翔ちゃんがトドメの一言。
「じーさまが了承したんだから仕方ないじゃない(笑)」
そう。翔くんのじーちゃん、サクライの会長が俺が社長だって聞いて「いいんじゃない?」って言うから俺は何も言えなくなっちゃったんだ。
「じゃっ!俺がイケメンに仕立て上げてあげるから金曜日、ちゃんと宣伝してくるんだよ~!」
相葉ちゃんが俺の背中を叩いて言った。
「宣伝って、仕事くださいって言えばいいの?」
「違いますよ。この場合の宣伝は、嵐粧堂の社長って、かっこいいだろう?です。ね、相葉さん?」
「ニノ正解っ!」
イェーイとハイタッチするお二人。
何言ってんだか……。あ、でもそう言えば今ので思い出したなぁ。
去年、何か、変なヤツいたわ。絡まれたわ俺。
今年もいるのかな?翔ちゃん…絡まれないといいけど。んー、でも社長の息子に絡むようなやつはいないか。うん。
いやっ、でも新しい取引先とかだったら翔ちゃんのこと知らないヤツもいそうだよなぁ。会社の資料にも載ってないし。
「何百面相してんの?」
また背中を叩かれた。こんどは潤だ。
「不安?なら俺もついて行こうか?」
イケメンな発言をする。いつもオトコマエだなぁこいつ。
「いや、大丈夫(笑)考え事してただけ。」
「そ?ならいいけど。」
ポンポンと俺の肩を叩いて行ってしまった。まぁ、面倒くさがってるのは見抜かれてるから、気にしてくれてるんだな。優しいヤツ。
新年会かぁーー。翔ちゃんは、ちょっと注意して見ておこうかな。もう顔も忘れちゃったけど、多分、ダメなヤツは雰囲気でわかるから。
んーっと伸びをして前を見れば、もうみんなそれぞれの仕事を始めてた。
さて、俺も取り掛かりますかね~。