久々嵐粧堂です。

ではでは。



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本社で用事を済ませるとラボに寄って大野さんに頼まれた材料を受け取った。

「この間のパッケージも綺麗だったねぇ。」

ラボの部長は大野さんの作品をチェックしてるみたいで、いつも感想を言ってくれる。
嵐粧堂に行くってなった時に何とかラボに残らないかと説得したらしいから、相当腕を買ってるんだろう。
2人で最近のパッケージについてしばらく話していると内線で呼ばれた。

「はい、松本です。」

「お、すまんなぁ、高橋だけど。」

「人事部長⁇どうしました?」

「うん、嵐粧堂に異動願いが出てるんだがなぁ。人手がいるなら送ろうと思ってな。どうだ?」

「まぁ忙しいと言えば忙しいですが…、どんな奴です?」

「おぅっ。じゃあ会社に詳細をメールしておくからみんなで考えておいてくれ。急ぎはしないから。」


サクライは個々のやる気を重視するから、別の部署に行きたいと言えば必ず動いてくれる。
みんな、行きたいと言うだけあって異動後の方が戦力になっているからだ。
ウチに来たいなんてどんな奴だろう。

「じゃ、俺行きますね。」

ラボの部長に挨拶をして、本社を出た。



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「ただいま戻りました~。」

俺が戻ると、ニノと翔さんが何やら話し込んでいて、相葉くんは事務処理をしていた。
大野さんは相変わらずアトリエかな?

「相葉くん、本社から異動願いの奴がいるってメール届いてるらしいんだけど。」

「あ、ホント?ちょい待って。」

相葉くんが確認している間に本社からもらった材料を持ってアトリエへ行く。

コンコン

「入るよー。」

中に入ると大野さんが作品をジッと見ていた。

「出来たの?」

「んー、何か足んないんだよねぇ。」

目の前にはchocolateの最新作、女の子がバレンタインの材料を買いに行くパッケージが出来上がってた。

「んー、何だろねぇ。」

一緒になって考える。

雪の中を歩く女の子。その周りには彼女が作ろうとしている贈り物が何種類も踊っていて、何を作ろうかウキウキしている気持ちが伝わってくる。

「……対照的なものは?貰う側の男の子とか。」

「……んー、男の子ね……。あ!そっか!空が無いのか!青色が無いんだ‼︎雪の白に女の子のコートの赤でしょ、チョコにケーキで赤系はあるのに青色がないんだ!ありがと松潤‼︎」

目一杯の笑顔をくれて、早速製作に取りかかろうとパッケージに向かった腕を掴んでこっちを向かせた。

「ちょっと休も。どうせ昼も食べずに作ってたんでしょ?俺が消化にいいもん作ってあげるから。」

「あ~……ん~……でも…」

イメージが浮かんでるのか、ソワソワしてる。

「本社から異動願い来てるみたいだし。あと1人増やすかみんなで考えよ。ホラ、手ぇ洗う!」

誰かがこうやって止めないと、この人は飯も食わずに没頭するから。
集中してるって事だからあんまり止めたくはないけど、もう4時。元々食が細いから3食はちゃんと食べさせないと。

「じゃあっ、じゃあメモだけっ!忘れちゃうかもしんねーからっ。」

描いたらちゃんと来いよ!と吐き捨てながらリビングに戻った。
社長にタメ口……。いくら5人しかいない会社だからってどうなんだ……。てかそもそも会社が一軒家。メシ作れるし冷蔵庫の中身も充実。風呂もあってベッドもある。
大野さんがメシに無頓着で寝るのもどこでも寝ちゃうから、マトモな生活をさせれるようにってこんな建物になったらしいってラボの部長が言ってたけど、それが本当なら絶対会長の指示だろうな。翔さんすら敬語使うのに、大野さん会長にタメ口で。それに対して嬉しそうに「YOU敬語使いなよぉ。」なんて破顔してるもんだから大野さん聞きゃしねぇ。普通のじーさんで出会ったからとか言って。

頭ん中でそんな事を考えながら鱈のムニエルとサラダを作る。トースターの中にはマヨネーズを塗って粉チーズを振りかけたバケット、それが焼けたらこの間大野さんがパン教室で作ってきたウインナーロールを焼く。
何でパン教室行ったのかは知らないけど調達のニノと行ったからきっと仕事に繋がるんだろう。

食べきれないくらい作ってきたから冷凍しておいたそれは多分他のみんなも食べるだろうから多めに。

「ねー、おいらのクレンジングオイル知らない?」

大野さんがアトリエから出てきた。

「あ!ごめんっ、俺が使った。風呂場に置きっぱなしだ。取ってくるよ。」

相葉くんがあわてて取りに行く。シミ抜きにでも使ったのか?

「そのまま風呂場で洗えばいいじゃん。」

「んー、でも汚れちゃったら悪いから。」

「大野さんは手はアトリエの洗面台で洗うって決めてるんですよね~。別にいいのに。」

翔さんやニノと会話する大野さんの手は、赤い色が所々着いてた。折角綺麗な手なんだから、あんまり荒れて欲しくないんだけどな。今度ハンドクリーム買ってこようかな。

「ごめんごめん。」

そう言いながら相葉くんが来て、いいよとふにゃりと笑いながら大野さんがアトリエへ消えた。




大野さんの遅い昼食と共に、軽いミーティングが始まる。

「相葉くん内容見た?」

「こういうのはみんなで一斉に見るのがいいんじゃ~ん♪プリントアウトはしたけど、何っにも見てないからねっ♪」

ウキウキしながらみんなにメールの内容が印刷されたものを配る。もちろん裏返しだ(笑)

「人の人生軽く左右するんですよ?不謹慎だなぁ。」

そう言いながらニノも笑ってる。

「うちに来たいってのも奇特な人だねぇ。」

翔さんも何だか嬉しそう。ここを評価してもらってるのが純粋に嬉しいんだろうな。

「よし、行き渡った?いくよ⁇せーのっ‼︎」

俺の掛け声で一斉に紙がめくられた。

「「あ……」」

「どれどれ?斎藤克也…サイトウ?あれ?」

「これって……」

「翔さんに絡んできた(笑)サイトウ?」

「だね……。」

みんなで顔を見合わせる。

「「「「却下で。」」」」

「え?……あ、そうなの?」

大野さんだけが不思議そうな顔をしてる。
他のみんなは全員一致。だってコイツ、絶対大野さん狙いだし。

「智くんは入れたい?」

翔さんがにこやかに尋ねた。本心は入れたくないけど、だからと言って不公平にはしない翔さんらしい。

「いや、みんな判断早いなぁってびっくりしただけ。おいらはどっちでもいいよ。皆の負担が少なくなるなら入れればいいし、必要ないなら入れなくていい。」

ふわりと笑って大野さんが答えた。

「じゃ、今回はすみませんがゴメンナサイって事で。」
ニノがみんなの資料を片付け始めた。

「本社には俺からメールしておくよ。」
翔さんが答えて、相葉くんがコーヒーを入れる。

大野さんはまだ食べてて、俺はウインナーロールを焼き始めた。
誰が言うわけでもないけど始まるコーヒータイム。


いつもの穏やかな日常。大切な時間。

チン!


焼けたパンを取り出しながら、しばらくはこの5人がいいなと思った。