18歳からの自炊塾 九州大学 生き方が変わる3か月 

比良松 道一 著 2020年11月初版

 

 

私が大学生の時に

こんな講義があったら受講したか?

と自問すれば、おそらく答えはNO。

 

 

子どもたちの大学にあったら、

絶対受けるべし!と勧めるけど

実際あったとて、子どもたちが履修するとは思えない。

何しろ効率重視でドライな子たち😅

 

 

 

でもなーーー、この講座で

得られる知識と経験は

絶対その後の人生 大きく変わるよ??

もしかしたら(いや絶対)

下の子の数々の不調も改善するに違いないと思う。

 

 

今現在の私には、

とてもとても魅力的な内容で。

受講できるものなら受講したい!!と思いながら読了。

 

 

もの凄く、いろんなことを考えされられる読書となりました。

私自身の生き方、暮らし方、考え方を揺さぶられるような。。。

 

 

18歳、大学入学と同時にこの講座を

履修しようとする若い子たちが眩しいです。

 

 

 

 

 

こちらの意図とは関係なく流れてくるSNS動画で

 「生」の反対はなんでしょう?

 「生」反対は「死」ではない

 「死」は生まれたものにしか存在しない

 「生」の反対は、生まれないこと

というのが流れてきた日、ちょうどこの本を読み始めて。

 

 

と、

P29に同じ文言が飛び込んできてびっくり👀

産婦人科の内田美智子先生が学生に問いかけたものと同じだったのです。

 

産婦人科での出来事が幸せなことばかりではないという話は続きます。20歳以下の人口中絶の割合は6割を超えること。中絶の相談に来る少女の多くが、まともに食事を作ってもらった記憶がないこと。満たされていないのはその子たちのおなかではなく、心であり自分が誰かに愛されているという実感でしか、その空虚な気持ちが満たされないということ。「性のトラブルを抱える子は、食のトラブルも抱えています。そんな彼女たちに必要なのは避妊方法を教える性教育でなく、食卓で心を育む生教育なのです」という内田先生の言葉に、大学生に対する食育の可能性を強く感じました。

 

P50

何かで失敗をしても、どうすれば失敗しないかを考えるそんなトライ・アンド・エラーを繰り返すことができる場を、親が子に与え、手を出さずに見守る。そうすることで、子どもは生きるために必要な力を身につけていく

 

この本で紹介されていた実際のこういう親子のやり取りはそれはもう素敵✨

(特にお父さんの温かい眼差しがたまらん。モラ夫ではありえん😓

 

P75

言葉や文章にするのが容易ではなく、語感で培った感覚で支えられている知識を「暗黙知」と言います。言語で共有しづらい暗黙知に依拠する技は「見よう見まね」を繰り返し、同じような感覚になってもらうことでようやく伝わります。そして不思議なことに、一旦身についてしまえば、一生忘れることがありません。しばらくやらなくても、次にするときは以前のようにちゃんとできる。こうした知識の記憶は、言葉の意味を理解して記憶するのとは異なる脳領域で記憶されていることが認知科学で明らかにされており「手続き記憶」と呼ばれます。〜〜中略〜〜 

 計量せずとも思い通りの味となる調味料やだしの使い方、炊飯器に決して負けない美味しいご飯を火力で炊く技、色も形も美しい卵焼きの作り方、開けた瞬間に思わず歓喜の声が上がる芸術的な弁当の詰め方、切れ味鋭い包丁となる刃の研ぎ方、その包丁で鮮やかに魚を捌く技など。料理の世界には、レシピには記載できない暗黙知に頼るものがたくさんあります。

 レシピに書かれていないことほど、五感を使って繰り返し体験することで体に染み込ませなければ身につきません。だから自炊塾では、自炊回数を成績点に反映させ、調理実演を頻繁に行い、そこで使用した食材を宿題と称して持ち帰らせ、毎週1回授業内容に沿ったテーマで料理を1品持ち寄って分かち合います。これらのアクティビティによって、自主練が繰り返され、その結果、暗黙知が身につく過程が確実に担保されるのです。

 

P81

 食事を与えられる「食べるだけの立場」から、「食べてもらう立場」になって気づく作り手の思い。それがわかるようになって芽生えてくる「他者への思いやり」こそが、この共食の場で最も期待していたことでした。

 

これよこれ!気に入ったものしか食べない、食べてもお膳も下げない。

食べたら食べっぱなしの我が子に学ばせたいったら😅

 

P85

「子ども一人を育てるのに村一つが必要」。人は多様な人間関係の中でつくられるという意味のアフリカの古いことわざです。〜〜中略〜〜

 公演活動を通じて知り合った方々に自炊塾の教育理念を説明し、九大自炊塾「大学生自炊応援団」の団員になっていただけないかと声掛けしました。すると全国から200人を超える「大人」が手を挙げてくれました。〜〜中略〜〜

 人は人によって磨かれる。いろんな経験を積んだ人生の先輩たちの考え方に触れ、少しずつ自分の未来予想図を描いていく。かつては想像もできなかった新しい村社会の中で、自炊塾の学生たちは、育てる側へとつながる階段を着実に上っています。

 

P107

和食に欠かせない発酵食品のみそが、日本人にどれくらい影響を与えるのかを知りたくなり、みそ汁をほとんど飲んでいなかった受講生29人と調べました。

 できるだけ良質の無添加みそ天然だし旬の食材を使ったみそ汁3週間毎日少なくとも1食はとるよう指示。実施前後に、腸の状態を知る指標となる便や食習慣に関する問診票(小林弘幸・順天堂大医学部教授作成)で「腸年齢」を比較すると、約7割に当たる21人の腸年齢が平均4.7歳、若返りました。

 そのうち5人は10歳以上、中には17歳若返った学生もいたのです。学生の年齢から17歳を引いたら幼児の年齢。それほど腸の状態が悪かったということでもあります。学生たちは「これからもみそ汁をとる習慣を身につけていきたい」「やっぱり日本食がいいな」と話していました。

 最近の研究では、日本人の腸は炭水化物の消化・吸収が良く、メタン生成菌が少ないため、抗酸化作用を高める水素量が多く、腸の蠕動運動も盛んなことがわかりました。さらに乳酸菌の一種ビフィズス菌も多く海藻の消化に必要な分解酵素を作る微生物も多いことなども明らかになっています。その理由は定かではありませんが、海産物を多用し、米麹で発酵させたみそを使うみそ汁を中心に据えてきた食文化がひと役買っているのかもしれません。

 

P110

 みそは和食になくてはならない調味料ですが、含有塩分が高血圧の原因になるとして、摂取量をできるだけ減らすべきだと考える人がいます。しかし近年、その心配を払拭するようなみその様々な効能が明らかになってきています。

 例えば、2003年には、味噌汁の喫食量が1日2〜3杯の人は、1杯以下の人よりも乳がん発症リスクが減少するということが、国立がん研究センターから報告されました。元来、アジアでは欧米に比べて乳がんが少ないのに、アジアからアメリカへ移住した人々の間で欧米人と同程度に乳がんが増えるのが、食生活の違いに起因するのではないかと考えて取り組んだ研究でした。研究成果は、みそを中心とした大豆製品を多用する伝統的食習慣が乳がんになりにくい環境づくりにひと役買っていることを示唆することになったわけです。近年、食の欧米化が進んだ日本で、乳がんが増加傾向にあることも納得がいきます。

 動物実験ではあるのですが、みそが胃がんのリスクを下げ、腸内の善玉菌を増やし、また、味噌に含まれる特定の乳酸菌が皮膚アレルギーを抑制する効果を持つなど、みその健康改善に対するさまざまな効果がわかってきました。塩分をそのまま摂取するよりもみそとして摂取留守方が血圧を上層しにくくすることも発見されています。〜〜中略〜〜

 このように、優れた機能性が次々と明らかになっていくみそですが、その一方で、1世帯あたりのみその年間購入量は減っています。総務省の家計調査によると、1979年には12.7Kgだったのが徐々に減少し、2016年には5.3Kgと半分以下にまで落ち込んでいます。年齢層別に見ると、若い世代ほど購入量は減少し、20歳代は60歳代の3分の1程度しか購入していません。

 

P120  大分県佐伯市「糀屋本店」の浅利妙峰さんの麴を使って料理を教える中園恵子さんの講義後

 自炊塾を受講し、大好きな甘い清涼飲料水をやめた彼女は、だしを取って作ったみそ汁を食べる回数が増えたころから、便通が良くなってきたのを自覚したそうです。「免疫細胞の6〜7割は腸にある。だから麴料理で腸内環境を整えるのは重要」という中園さんの言葉に、麹を積極的に使えば自分の体にも何らかの変化が起こるかもと期待を抱き、塩麹と甘酒も手作りして料理に使っていたのです。

 「食事は心と体をつくっている」。自炊塾の最終レポートに彼女が書いた言葉には重みがありました。聞けば、今も肌の調子は良いとのこと。恐るべし、麴パワーです。

 

 

P123

 調味料の価格はとても多様です。身近な店で購入可能な酒、みりん、醤油で価格の違いを調べたところ、最も安いものと高いものとでは4倍ほどの差がありました。価格の差は何を意味するのでしょう

 まず、原材料表示を見ます。価格が高い醤油の場合、大豆、小麦、食塩とありますが、価格や安い醤油の場合、大豆が脱脂加工大豆に変わり、さらに果糖ブドウ糖液糖、調味料(アミノ酸等)、甘味料(ステビア、甘草)が追加されています。 〜以下酒、みりんも同様〜つまり、安い調味料は原材料を節約し、その分を添加物や代替物で補うことで価格を抑えていると言えます。 

 これだけ原材料が異なると、料理の味は違ってくるのではないか。そう思って、価格が異なる醤油、みりん、酒、それぞれ大さじ1杯ずつと適量の甜菜糖で味付けしたきんぴらごぼうを自炊塾の受講生と一緒に食べ比べしてみました。

「ごぼうの風味の残り方の違いに驚きました」と学生。価格が高い調味料で味付けしたきんぴらは、ゴボウ特有の豊かな香りや、程よく調和した上品な旨みが感じられます。それに比べると価格が安い調味料で味付けしたきんぴらは甘さが際立った濃厚な味で、ごぼうの香りがほとんど感じられませんでした。醤油やみりんの原料には本来なかった甘味添加物(ブドウ糖加藤液糖、水飴、ステビア、甘草)がいくつも加えられたことが、仕上がりの風味の違いに影響したのでしょう。

 安い調味料では使用料を減らしても、高い調味料のような食材の風味や上品なうまみをなかなか再現できません。その点、添加物が入っていない高い調味料は味付けの微調整が容易で、食材の大切な風味をしっかりと引き出す味付けができるように思います。

 料理の主役は調味料でなく食材です。新鮮で美味しい主役が手に入ったなら、主役の持ち味がちゃんと感じられるような美味しい作品に仕上げたいものです。そのためには、ギャラが多少高くても、名脇役の調味料たちを揃えることが自炊力を向上させる近道だと思います。

 

P130

 子どもの貧困率が高い福岡県。家庭で十分な食事にありつけない生活困窮家庭の子どもに賞味期限前のコンビニの弁当やパン、おにぎりを提供する件の事業が2016年2月に始まりました。関係者の善意と尽力で実現した施策でしょうが、一方で思うのです。急場の対策としては必要でも、与えられるだけでその子らの将来が切り開けるのだろうか、と。

 茶碗1杯分の米代は、1Kg400円の米ならわずか29円です。栄養たっぷりのみそ汁だって、みそと乾物さえあればお湯を注ぐだけでも作れますもし児童にそういう知恵や技術があったなら、外で買って食べるより遥かに安く、栄養的にも優れた朝食が自分で取れるでしょう。

 ただ、こうした力は自然と身につくわけではありません。厳しい環境にいるひもじい子だからこそ、自炊に関するさまざまな力を早いうちに育み、その子の自立に繋げる必要があるように思います。その意味で、安い値段で食事を与えるだけではない「子ども食堂」が増えればと、期待しているところです。

 

 

P138

 防災教育の専門家、杉本めぐみさんは「2Lペットボトルの水5〜6本以上と、カセットコンロ1台、専用ガス缶数本を必ず自宅に常備して」と学生たちに訴えます。災害時は長期間の停電がおこる可能性が高いからです。

 学生が一人暮らしをする最近のアパートには、ガスコンロがない場合が多くなっています。万が一、一人暮らしのアパートに籠城するようなことになったとしても、自分でお湯を沸かし、調理ができる環境を整え、穀類、缶詰、乾物(だしの材料を含む)など保存の利く食材を常備しておけば、ご飯、みそ汁、簡単なおかずを自炊して、しばらくは困らずに過ごせるでしょう。

ただ、日頃やっていないことは、急にはできないものです。だから日々の自炊で練習するのです。

 

P141

生産と消費は表裏一体。生産者が育てた作物を評価し、それに見合う対価を払う消費者も農業を支えている。五感に訴えながら農を守る人を育てる消費者教育もまた、自炊塾の大切な使命だと考えています。

 

P150

医は食に、食は農に、農は自然に学べ

医師で公立菊池養生園(熊本県菊池市)名誉園長の竹熊宜孝(たけくまよしたか)先生の言葉です。命を大切にしたければ健康につながる食や、それを支える農業自然環境まで、すべてが繋がっていることを意識しながら学ぼう。私はこの言葉をそう解釈しています。自炊を通じて、医療、農業、環境の分野まで学び、木も森も見ることができる俯瞰力を身につけようとする自炊塾では、この言葉を授業の理念として必ず初回に紹介し、最終回に改めて、はなむけとして贈ります。

 

P158

 驚きや感動の出来事は、そうでない出来事に比べると長く記憶に残りやすく、のちに振り返ると、人生の節目転機になったと感じることが多々あります。心揺さぶられる思い出が、実は今、一生懸命打ち込んでいることのきっかけになったというのは、皆さんも身に覚えがあるのではないでしょうか。

 

P159   驚きや感動を感じてもらう授業には何か法則のものはあるか?

ポイントは、必ず「2つ以上のものを比べる」場面からスタートすることです。人は何かを比べると違いや変化に気づきます。と同時に、「なぜ違うの?」「どうして変わったの?」とごく自然に疑問を抱くことができます。この「なぜ?」「どうして?」が人を驚きや感動の発見へと導く重要な発火装置なのです。

 

 

 

他にも 書き写しはしなかったけれど

お茶を淹れられない子が増えていること(そう言えば我が家にも急須は無い)

ガムシロ6個を500mlのミネラルウォーターで希釈したものと、市販の黄色い炭酸飲料を飲ませる体験。ガムシロ希釈は甘すぎて飲めない。でも炭酸飲料は飲み干せる。ほんの少しのレモン果汁と香料、ビタミンC、カロテン色素が含まれていることで強い酸味、香料による良い香りに騙されているけれど、どちらも同じカロリー(同じ糖分が含まれている)であること。レモン果汁やビタミンCが必ずしも健康のためではないこと。摂取し続けることで膵臓に負担となり繰り返すと糖尿病を助長すること。世界的な患者の増加と深く関わっていることを知るクダリ。

天然もので取るだしの意味。

 

 

などなど、本当にタメになるお話がたくさん!!!

 

 

 

比良松先生は

ネット検索したら、現在は新潟食料農業大学の教授をされているようです。

(新潟食料農業大学!?2018年に創設された大学だそうです。農業大学としては東京農大から93年ぶりの新設大学とか)

 

 

本を読んで、自炊塾でも検索。⬇️10年以上前の記事だけど。。。

 

 

2020年の九州大学のシラバス

↑見れるかしら・・・?

とっても魅力的なカリキュラム。