そして俺等は少し外を歩くことにした。家にいてもやることが無かったし、ただ眠る気にもなれなかったからだ。街頭の無い乾いた道路とぬかるんだ地面を足元に注意しながら進んだ。他愛の無い会話。たぶんくだらない下ネタかなんかだったんだと思う。笑い声が暗闇に消え入るように響いた。
「人が住んでるところもあるんだな。」
見渡せばカーテンの隙間からわずかに明かりの漏れる家が数軒ある。本当に人だろうか、と少しだけ不謹慎なことを考えもした。
さらに暫く歩くと波の音がした。だんだんと音は大きくなる。今は使われていない廃工場を抜けるとそこは海だった。波の音はするのに水たまりのように穏やかで、静かに揺れていた。水面に月が写っている。満月だ。とても大きくて、そしてとても綺麗だった。まるで月は海底深く沈んでいて、その光が地上に漏れ出して空まで届いている。そう錯覚するほど圧倒的な存在感だった。俺等は暫くの間、何も言わずにそこに立っていた。
空が明るくなってから俺は歩いて家に帰った。とても疲れていたが、まずシャワーを浴びたかった。流したかったのは汗だけじゃなかったのかもしれない。
冷房の効きすぎた部屋で目を覚ますと、午後二時を回っていた。風邪をひいたかもしれない。冷房を止めて、鼻をかんでから、何故だか分からないけど、ほんの少しだけ泣いた。
【好きなやつ13】
夏の日の午後/eastern youth