「ねぇ・・・・・・・・?」







短い授業と授業の間のハーフタイムが終わり、息を切らしながら自分の席に着席したばかりの俺にあの娘は言った。







「は?なんで?」



「いいから。」



「・・・・・・・。」



「あのさ・・・」







言葉に詰まった俺に何か言いかけた瞬間に先生が到着し、騒がしかった教室がピタリと静かになった。



それから思春期の俺は授業にまったく身が入らず、前かがみになって彼女の言葉を反芻していた。そしてあっという間に放課後になった。



当時、俺は柔道部に在籍していたが、まったく身が入らずにこのままやって怪我しても嫌なので壁際で乱取りする先輩たちをある程度の声を出しつつ眺めていた。そして汗もかかずに部活も終わると、



外はもう真っ暗だった。あの娘は校門の前に立っていた。







「帰らないの?」







俺が聞くと彼女は戸惑いつつも歩き出した。俺はどうしてもさっき彼女が言っていたことを確かめたかった。しかし、聞けない。どう言葉を切り出していいかわからなかった。一方的なくだらない会話だけが続いた。彼女の家の前に着いてからもしばらく話し続けていたが、そろそろ話題が尽きてきた。







俺は大事なことを口に出すのが苦手、というか嫌いだ。言葉にするとどんなものもただの言葉というものになって、途端に安っぽくなる気がするからだ。だから照れ隠しでいつもテキトーなことばかり言う。本当に大切なものを見せないように。







でも、困ったことに大切なことは大切なほど、言葉にしないと伝わらない。門の中に入りかけたあの娘を止めなければいけない。俺は言った。







「バッファローマンの正体が事務のおっさんだって本当か?」



「うん。だって手首にバッファローマンと同じ大きいリストバンドつけてるの見たよ。」



「そっか、そうだったのか。・・・じゃあまた明日。」



「うん。また明日。」







ちらつき出した雪が街頭に反射して光っていた。





【こうちゃんの好きなやつ2】


do not disturb/竹内電気



ギターのカッティングがいっぱいのポップな曲はおじさんの大好物になります。笑