旅する写真家、河野鉄平さんの写真展が開かれています。


061028 テッピーDM


河野鉄平写真展
「もし昨日、悲しいことがあったとしても」
土屋鞄 鎌倉店
2006.10/20~10/30
open 11:00~18:00
入場無料


 鉄平さんと知り合ったのは、彼が以前にテラウチマサトさん(写真家/私の写真の先生)の事務所で仕事をしていた時のこと。
 テラウチさんのアシスタントして、写真教室の運営スタッフとして、また、創刊期の写真誌「PHaT PHOTO」の編集者として仕事をしていました。激務な毎日だったでしょうに、そうは見えないキャラが特徴(?)で、思わずふきだしちゃうエピソードも多数。退職すると聞いた時は、寂しく、けれど、写真家としての活動が楽しみでありました。
 そんな鉄平さん、旅をしながら撮影し、毎年1回のペースで写真展を開催しています。毎回の開催スタイルも個性的。今回は、鎌倉・由比ケ浜(和田塚駅)にある、職人さん手作りの上質な革鞄を扱うお店で開催しています。会期終了が近づいていますが、週末、時間を作ってでも行ってみてほしい、そんな写真展でした。

 一昨年の暮れのスマトラ島沖を震源とする地震(大津波)で、私は大切な友人を失いました。その友人の実家は、会場のすぐ近く。そして、26日は月命日でした。前の記事のMacの修理と、この写真展と、友人の実家へのお参り。方角も一緒なので、仕事の休みをとって出かけました。
 「もし昨日、悲しいことがあったとしても」というタイトルが、ただそれだけで、ストレートに心に響いてきました。撮影地は、どうやら津波被害にあった島のようです。それもあって、どうしても見てみたくて・・・。
 ところが、出発が遅れ、そのうえ私、閉店時間を1時間勘違いしていました。初めての場所、車を止める駐車場を探し、お店の場所を尋ねながら辿り着いた時、すでにお店は閉店していました。けれど、シャッターが降ろされていたものの、下の方が少し開いていて、中にはまだ灯りがついている。しゃがんで中をのぞいたり、お店の前を行ったり来たりして・・・。
 今日を逃したら、もう来られる日がない、どうしても見たい。その一心で、シャッターをくぐり、ドアをあけて「こんばんは」と声をかけたら・・・。中から女性が出てきて、「鉄平さんは帰られましたが、よろしかったら展示だけでもご覧下さい」と、中に入れてくれました。

 申し訳ない、けれど、本当にありがたくて、焦りながらも、心を落ち着けようと努めて鑑賞しました。
 ところ狭しと、壁面いっぱいに展示された鉄平さんの作品たち。そして、その地へ、また、この写真展に至った思いが綴られたメッセージがありました。
 感傷ではない、同情でもない、通り過ぎたくはない、でも、近づくこともできない。旅人として、それらの感情と向かい合い、そしてそれを突き抜けた、なにかとても純粋で透明なものが、鉄平さんの写真たちから伝わってきました。
 現地の人や風景と、出会いふれあうということは、それらとの距離を縮めるように見えて、そこにどうしようもない隙間を感じてしまうことなのかもしれない。けれど、それは埋める必要はなくて、その埋めようもない距離を保ったまま、ただただシャッターを切っていったような、そんな空気を感じました。
 旅とは、あらゆる意味での「距離について」感じ、考えさせられること。そして、旅をするとは、それを確認しにいく行為なのかもしれない。そんなことを感じて・・・。

 見ているうちに、写真自身から伝わってくるもの、写真家と被写体への想像、個人的体験、そして、土屋鞄さんの場の持つ空気とで、涙が止まらなくなってしまいました・・・。
 ふだんなら、目立たないように涙をふいて、そそくさと出てきちゃうところだけど、この時は、なぜかお店の方にシェアしてもらいたくなって、「大丈夫ですか?」と聞いてくれたこともあり、気持ちを少し打ち明けました。すると、お店のTさんも涙目になって、この企画についての思いをシェアしてくれました。
  短い時間で、驚くほど深くシェアしあって、最後はふたりとも涙と鼻水・・・。そして、ハグしあってお店をあとにしました。

 もしも昨日、悲しいことがあったとしても。
 今は立ち上がれなくても。
 明日がある。
 いつか準備が整ったら。
 でかけよう、もう一度。
 お気に入りの鞄に、ありったけの夢と道具を詰めて。

 鉄平さん、土屋鞄のTさん、ありがとうございました。

※土屋鞄さんは、通常は、閉店後はシャッターを完全にしめているそうです。閉店後のお買い物等は、基本的にはできないようです。ご了承下さい。