無し無し ナシーク
あれだけ外に出たくなかったのに、またやってしまった。
しかし私は学ぶ人間です。
放浪は辛いんです。
インドで家の外はだいたいつらい。
もうとっくに知っている。
だから今回は日帰りにした。
家に帰れる、今日中に家に帰れる、と思えばまだ救いがある。
日帰りで行けるおもしろそうな場所なんてもう知らない。
地球の歩き方には無い。
なのでもうとうとうグーグルマップを取り出した。
グーグルマップで200km以内にある、何となく大きい文字で書かれている土地。
そこを適当に選んで、足があるか調べて、
バスで5時間、とある。
Nashik
聞いたこともない。
地球の歩き方には載っていない。
ネットで調べると、12年に一度大きなお祭りの開催地になる、
バラナシに次ぐ聖地だとか。
そしてちゃんと石窟がある様だ。
と言うことでほとんど調べずに、何とかなるかと自分を騙し騙し、
週末の明け方、
家のゲートをこっそり開いて、家出をした。

凍える様なACバスの中から、朝市が見える。
ひたすら何をするでもなく、ぼんやりとバスに揺られること5時間。

マハラーシュトラの田舎町、ナシークに到着。
早速携帯は電波を失っている。
ここがどこか見当もつかない。
地図も持っていない。
もうアホなんです。
私。
そうなんです。
空気が良い。
石窟があるのでひとまず向かう。
ムンバイを出た瞬間メーター制じゃなくなるオートにイライラする。

あの丘の上。

ほとんど人もいない。
山賊とか出たらどうすんの。
最悪は身ぐるみはがされて名もないインドの丘で野生化するしか無い。

階段をひたすら登る。
暑いしすでに後悔しかない。
この時点でもう帰りたい。
恐る恐るダメ元で出したインドのIDが何と今回は機能を果たす。
入場料、5ルピー。
普段250ルピー払わされるのが5ルピー。
逆にいつも50倍払ってますよ。

あーもうこうゆうのばっか見てるし知ってるしー。

でも来ちゃうのこれ何でなん。

若干他より仏教色が濃い。
あー本当に仏教、インドから来たんやなぁと思う。
私は石窟に手は合わせない。
だって何か違うから。
おっぱいボインの像とか象さんライオンさんみんな仲良し、
みたいのとか何か滑稽で全然そんな気にならない。
インドの仏教と日本の仏教が違うって思ってしまうし、
更に言えば信仰みたいなもんそのものが最近はよくわからない。
しかし結局のところ、自分がなんまんだ、って日本のお寺では手を合わせるのは、
おおもとはここかよって思うと本当によくわからん。

丘の上からのまあまあの景色。
絶景とまでは言わない。
2時間ほど隅々まで似たり寄ったりの石像を見て、
下にあった丸い建物に入ってみると、
金ピカの仏像の前で、お坊さんがめっちゃ音痴な読経中で、
ドームの中で声が不思議な響き方をする。

ここが意外と良かった。
一応仏教徒なので、静かに瞑想。
祈ることは最近しなくなった。
あまりにも色んな宗教に最近触れすぎて、
ああ何か祈るって、何だかな。ってなってしまった。
私の願いなんて日本に帰りたい、ぐらいなもんだし。
そしてまだお昼なのに早速行くところが無い。
どこに行けばいいかわからない。
誰や、こんなとこに下調べもせんと行こう言うたんは。
辛うじて持ちあわせていた知識で、川があると言う。
クンブメーラと言うヒンドゥーで最も大きなお祭りの時に、
サドゥが集まる川があると。
距離感もどこにあるかも東西南北も全くわからないけれど、
とりあえずガートに行ってくれ、とオートに乗り込んだ。

そしてそこにはバラナシのしょぼい版みたいなのがあった。



やることが無いのでひたすら水辺の寺院を周りながら、川辺を歩く。
洗濯ものを親の仇の様に叩きつける女性、
ってゆうかもうおっぱい出ちゃってますよ、のおばあちゃん、
パンいちで脱法ハーブ吸ったんですか?ぐらいのテンションで水遊びする少年、
日本人はおろか白人すら一人もいないので、
慣れているはずの奇特なものを見る視線が半端ない。
バイクの青年に写真撮ってくれ、と言われて、どれでだよ、って聞いたら、
俺は携帯持ってないからお前のカメラで一緒に撮ってくれ、と言われた。
それを撮ってどうしたかったの。
何なの。
何でなん。

呪いに使うための脱法ハーブを売っている。
ひと休みしていた公園で、裸足で遊んでいた子どもが何かを踏んだらしく、
ぎゃん泣きしている。
目の前であまりに泣くもんでちょっと怖くなって、私が日本でも持ち歩いている、
ご飯を食べる前に手を拭くためのアルコールと、絆創膏をあげると、
一瞬で笑顔になってついでに2ルピーくれ、と言われた。
えええええええええ
びっくりした。
なにそれ。
新しい愛のカタチ?
親切は必ずしも感謝と言う形で戻ってこない。
どれだけ尽くしたところで、相手に同じものを求めては、
傷つくばかりなのだから。
いよいよ川べりにも飽きてきて、
しかもここどこだかわかんないしどこがメインかもわかんないし、
何て言う川かもわかんないし、
時間はまだあるしで、適当に歩く。
わざと迷子。
これももう美味しいものもないし目新しいものも無いしで
すぐに疲れてしまって、結局帰りのバス乗り場近くのレストランに入る。

何と今回持ってきたのは、おもろないフランスの本ではない。

プラナリア/山本文緒
直木賞作品。
おもしろかったしこの人の本は、
周りでオートがクラクション鳴らしまくろうが、
頼んだトマトオムレツなるものが辛いだけで全然おいしくなかろうが、
そのオムレツが半分も食べていないところでハエの餌食になって食べることを諦めようが、
仕方なく頼んだマンゴースムージーに苦手なイチゴアイスを勝手に入れられようが、
ここがインドだろうがしかも名もないガイドブックにも無いわけわからん場所だろうが、
なんだろうが、
全力で本の中の日本に連れて行ってくれる。
甘えちゃだめなのか。
言い訳しちゃだめなのか。
逃げちゃだめなのかシンジ。
人の顔色うかがわなあかんのか。
もう全部どーんって叩きつけて、ぐちゃぐちゃにして、
知らん!って、
それじゃだめなのか?
バスまで時間がたっぷりあって、結局1冊読み終えてしまった。
ベンツのマークを全面に押し出した凍えるバスで、
ムンバイに戻るともう夜だった。
ナシークで一番おもしろかったのは山本文緒の小説だ。
そして私は決めました。
来週末、一歩も家を出ません。
しかし私は学ぶ人間です。
放浪は辛いんです。
インドで家の外はだいたいつらい。
もうとっくに知っている。
だから今回は日帰りにした。
家に帰れる、今日中に家に帰れる、と思えばまだ救いがある。
日帰りで行けるおもしろそうな場所なんてもう知らない。
地球の歩き方には無い。
なのでもうとうとうグーグルマップを取り出した。
グーグルマップで200km以内にある、何となく大きい文字で書かれている土地。
そこを適当に選んで、足があるか調べて、
バスで5時間、とある。
Nashik
聞いたこともない。
地球の歩き方には載っていない。
ネットで調べると、12年に一度大きなお祭りの開催地になる、
バラナシに次ぐ聖地だとか。
そしてちゃんと石窟がある様だ。
と言うことでほとんど調べずに、何とかなるかと自分を騙し騙し、
週末の明け方、
家のゲートをこっそり開いて、家出をした。

凍える様なACバスの中から、朝市が見える。
ひたすら何をするでもなく、ぼんやりとバスに揺られること5時間。

マハラーシュトラの田舎町、ナシークに到着。
早速携帯は電波を失っている。
ここがどこか見当もつかない。
地図も持っていない。
もうアホなんです。
私。
そうなんです。
空気が良い。
石窟があるのでひとまず向かう。
ムンバイを出た瞬間メーター制じゃなくなるオートにイライラする。

あの丘の上。

ほとんど人もいない。
山賊とか出たらどうすんの。
最悪は身ぐるみはがされて名もないインドの丘で野生化するしか無い。

階段をひたすら登る。
暑いしすでに後悔しかない。
この時点でもう帰りたい。
恐る恐るダメ元で出したインドのIDが何と今回は機能を果たす。
入場料、5ルピー。
普段250ルピー払わされるのが5ルピー。
逆にいつも50倍払ってますよ。

あーもうこうゆうのばっか見てるし知ってるしー。

でも来ちゃうのこれ何でなん。

若干他より仏教色が濃い。
あー本当に仏教、インドから来たんやなぁと思う。
私は石窟に手は合わせない。
だって何か違うから。
おっぱいボインの像とか象さんライオンさんみんな仲良し、
みたいのとか何か滑稽で全然そんな気にならない。
インドの仏教と日本の仏教が違うって思ってしまうし、
更に言えば信仰みたいなもんそのものが最近はよくわからない。
しかし結局のところ、自分がなんまんだ、って日本のお寺では手を合わせるのは、
おおもとはここかよって思うと本当によくわからん。

丘の上からのまあまあの景色。
絶景とまでは言わない。
2時間ほど隅々まで似たり寄ったりの石像を見て、
下にあった丸い建物に入ってみると、
金ピカの仏像の前で、お坊さんがめっちゃ音痴な読経中で、
ドームの中で声が不思議な響き方をする。

ここが意外と良かった。
一応仏教徒なので、静かに瞑想。
祈ることは最近しなくなった。
あまりにも色んな宗教に最近触れすぎて、
ああ何か祈るって、何だかな。ってなってしまった。
私の願いなんて日本に帰りたい、ぐらいなもんだし。
そしてまだお昼なのに早速行くところが無い。
どこに行けばいいかわからない。
誰や、こんなとこに下調べもせんと行こう言うたんは。
辛うじて持ちあわせていた知識で、川があると言う。
クンブメーラと言うヒンドゥーで最も大きなお祭りの時に、
サドゥが集まる川があると。
距離感もどこにあるかも東西南北も全くわからないけれど、
とりあえずガートに行ってくれ、とオートに乗り込んだ。

そしてそこにはバラナシのしょぼい版みたいなのがあった。



やることが無いのでひたすら水辺の寺院を周りながら、川辺を歩く。
洗濯ものを親の仇の様に叩きつける女性、
ってゆうかもうおっぱい出ちゃってますよ、のおばあちゃん、
パンいちで脱法ハーブ吸ったんですか?ぐらいのテンションで水遊びする少年、
日本人はおろか白人すら一人もいないので、
慣れているはずの奇特なものを見る視線が半端ない。
バイクの青年に写真撮ってくれ、と言われて、どれでだよ、って聞いたら、
俺は携帯持ってないからお前のカメラで一緒に撮ってくれ、と言われた。
それを撮ってどうしたかったの。
何なの。
何でなん。

呪いに使うための脱法ハーブを売っている。
ひと休みしていた公園で、裸足で遊んでいた子どもが何かを踏んだらしく、
ぎゃん泣きしている。
目の前であまりに泣くもんでちょっと怖くなって、私が日本でも持ち歩いている、
ご飯を食べる前に手を拭くためのアルコールと、絆創膏をあげると、
一瞬で笑顔になってついでに2ルピーくれ、と言われた。
えええええええええ
びっくりした。
なにそれ。
新しい愛のカタチ?
親切は必ずしも感謝と言う形で戻ってこない。
どれだけ尽くしたところで、相手に同じものを求めては、
傷つくばかりなのだから。
いよいよ川べりにも飽きてきて、
しかもここどこだかわかんないしどこがメインかもわかんないし、
何て言う川かもわかんないし、
時間はまだあるしで、適当に歩く。
わざと迷子。
これももう美味しいものもないし目新しいものも無いしで
すぐに疲れてしまって、結局帰りのバス乗り場近くのレストランに入る。

何と今回持ってきたのは、おもろないフランスの本ではない。

プラナリア/山本文緒
直木賞作品。
おもしろかったしこの人の本は、
周りでオートがクラクション鳴らしまくろうが、
頼んだトマトオムレツなるものが辛いだけで全然おいしくなかろうが、
そのオムレツが半分も食べていないところでハエの餌食になって食べることを諦めようが、
仕方なく頼んだマンゴースムージーに苦手なイチゴアイスを勝手に入れられようが、
ここがインドだろうがしかも名もないガイドブックにも無いわけわからん場所だろうが、
なんだろうが、
全力で本の中の日本に連れて行ってくれる。
甘えちゃだめなのか。
言い訳しちゃだめなのか。
逃げちゃだめなのかシンジ。
人の顔色うかがわなあかんのか。
もう全部どーんって叩きつけて、ぐちゃぐちゃにして、
知らん!って、
それじゃだめなのか?
バスまで時間がたっぷりあって、結局1冊読み終えてしまった。
ベンツのマークを全面に押し出した凍えるバスで、
ムンバイに戻るともう夜だった。
ナシークで一番おもしろかったのは山本文緒の小説だ。
そして私は決めました。
来週末、一歩も家を出ません。