ドイツを引き合いにするのはやめたら? | 徹通塾・芝田晴彦のブログ

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民族自決 戦後体制打破
基地問題を考える愛国者連絡会 / 自由アジア連帯東京会議

大戦後の西側諸国全体の主要政策の一つが「反共」であり、もう一つは「ドイツ・日本を抑え込む」ことである事に疑念の余地は無い。前者の「反共」 はとりあえず置いて、後者の「ドイツ・日本を抑え込む」について触れる。




欧州では1949年に英仏が主体となり、米国を中心とした軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)が誕生した。目的は先にも触れたとおり「反共とドイツの抑え込み」である。

一方、朝鮮戦争や冷戦の影響を受け、再軍備を禁じられていたドイツも「ドイツ連邦軍」の創設並びにNATOへの加盟の準備を始める。歴史的経緯から当初フランスが反対するものの、結局1955年、誕生したドイツ連邦軍はNATOに加盟する。

余談だが、NATO加盟国間は相互に集団的自衛権発動の義務を負い、また、ドイツ連邦軍は最近まで徴兵制を採っていた。

NATOの考え方の一つは「バランス」である。かつて幾たびも戦火を交えた欧州諸国はそれを繰り返さぬために、加盟各国のうち一国の軍備が突出しないようにした。更にここに圧倒的な軍事力を持つ米国の軍や核が配備され(ニュークリア・シェアリング)、冷戦下、ソ連~東欧に対峙した。

結果、「冷戦」は冷戦のままに終わり、欧州を舞台とした三度目の大戦は阻止されたというのがもっぱらの評価。米国が加盟国に配備した核も、冷戦終結後は削減されたが、戦術核は引き続き配備されている。ドイツには現在B61核爆弾(広島型原爆の40倍の威力)が20発備蓄され、独空軍・第33戦闘爆撃戦航空団が投下任務にあたる。

ドイツ連邦軍はNATOの一員としてヨーロッパ防衛義務を負う。また、湾岸戦争の時に人的後援を行わず国外から批判された事もあり、その後はEUあるいは国連の一員としてPKOを行う機会が増えてきており、ドイツ連邦軍の犠牲者もアフガニスタンやボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ等で100名を超える。




左派・リベラルの間で「日本は『戦後』をドイツに見習え!』と度々繰り返される。が、西側諸国にとっての脅威が旧ソ連から中国へと代わった現在、置き換えるとこうならないか?

『再軍備を禁じた憲法9条を改正、わが国は「日本国防軍」を創設、徴兵制も施行される。一方中国の脅威に対応し米国主導で「東アジア条約機構(EATO)」が誕生。当初韓国が反対するものの、結局日本国防軍は加盟、集団的自衛権の義務を負う。また、日本国防軍は当面、徴兵制を採る。米軍の核も配備され、入間基地の中部航空方面隊第八戦術爆撃航空団が投下の任務にあたる・・・日本はEATOの一員として東アジア防衛義務を負う。近年は国連の一員としてPKOを・・・』

現在のわが国がこのとおりにしたら、左派は「日帝の戦前回帰だ」と騒ぐだろうが、戦後ドイツはこんなものだ。




おまけ。『歴史認識』。


ドイツは戦争責任をヒトラーとナチスに全て負わせる一方、独国防軍に関しては基本的に「清廉潔白な国防軍」「国防軍無罪論」「国防軍潔白神話」を貫いている。ドイツ軍による戦争犯罪とナチスのユダヤ人迫害を故意に切り離し、アウシュビッツ等、ナチスの犯罪である後者については謝罪を繰返す一方で、前者に関しては触れる機会も少ない。




言いたいこと。


左派リベラルは戦後のわが国の態度を批判するのなら、安易にドイツを引き合いにしない方がいい。

もう一つ、昨年から揉めている「集団的自衛権行使容認」。私はそれ以前に前提となる「日米安保条約」にこそ問題があると思っている。(晴)