● 酔うと隣の客を蹴飛ばす
ぼくのどこが気に入ったのか、それからは東京に来るたび電話がかかってきた。
逃げても見つけるから、呼ばれたら財布を持って駆けつけました。勘定は、いつもぼく持ち
やすしさんが飲むのが好きで、
不思議なんです
バーに入ると15分もしないうちにケンカが始まる。
「こら! なんやお前!」
「こら! 貧乏人!」
って言いながら、蹴っ飛ばし始めるんです。さっきまでニコニコしてたのに。そのたびに、ぼくが「すいません、すいません」って謝ってました。
タクシーに乗ったときも気が抜けません。銀座から新橋の焼肉屋に行こうとタクシーに乗ったら、運転手がラジオを聞いてたんです。
そしたら、運転手の後ろに座ったやすしさんが、背もたれを蹴り出した。
アルコール障害
「こら! 後ろ見んかい! 木久蔵とやすしが乗っとるんや! どんなおもろい話するかわからんで。ラジオ消せ、ラジオ! おもろないわ!」
そういうときのため、ぼくは千円札を三枚入れたポチ袋を持ち歩いてました。座席の横から運転手にそっと渡して「ごめんね。ちょっとこの人、機嫌が悪くて。近くて悪いけど、新橋までお願い」って頼んで、どうにか行ってもらいました。
今日だけ機嫌が悪いわけじゃなくて、いつもその調子。想像もはるかに超えた飲み方でした。
● ひどい目に遭うのも面白かった
ひどい目に遭わされ払っていっしょに飲んでたのかって不思議に思われるかもしれません。
ひと言で言うと、そういう状況も含めて面白かった
売れていた人だし、行動も発想も放つオーラも独特だった。
本を何十冊読むよりもたくさんのことを学ばせた。
ちょうど全国ラーメン党を結成した頃、久米宏さんといっしょにTVスクランブル」に出演していました。
あの番組に出るときは、だいたい酔ってました。それで収録に来ないときもあって。
やすしさんに「さすがにまずいから、収録が終わってから飲んだらどうですか」って言ったんです。そしたら、
「おもろないわ! 久米のヤツ、スカしやがって。あいつは笑いがわからんのや。吉本が取った仕事やからやっとるけど」
と文句言ってました。お酒のことでいろんな人に注意され、飲まないようにマネージャーやスタッフが目を光らせていたんでしょうね。
そのうちテレビ局のトイレの鏡の裏側に、ウイスキーの小さな瓶を隠し始めそれを飲んでからスタジオに入るんです。
お酒に対する執念がすごいですね。
● ドキドキを味わわせてくれた
やすしさんは7歳年下なんですけど、ずっとぼくが敬語を使っていました。あちらのほうが売れてたし、やすしさんは関西弁、ぼくは東京のしゃべり方なんで、敬語を使っていると安心してくれたみたいです。
ジャンルは違いますが、お互い芸人としてリスペクトし合っていたと、ぼくは思っています。
やすしさんといると、いつ何が起こるか、どこでどんな反応をするかわからない。そんなドキドキを味わわせてくれるのが、魅力的なんですよね。「この状況ではこうする」という“常識”を気にしない人でした。わざと型破りを演じていたわけでもない。自然体だったんです。
好きすぎたお酒で寿命を縮め、1996年に51歳で亡くなりました。
早かったと思いますが、濃い生涯でした。常に自分の気持ちに正直に行動して、人生を目いっぱい楽しんだんじゃないでしょうか。
たいへんな目に遭いましたけど、やすしさんのようなバカのエリートと付きあえて、ありがたかった。何より、楽しかった。
夜中に家に来られるのは、勘弁してほしい
ヲタ活は自分のできる範囲でする。現場でも在宅でも。無理せず、体調やプライベートのことも考えてやる。
他人を逆恨みして自分で無くしたり、喧嘩腰で話しかけ、そんな奴は演者やヲタからも干される
i