どうも、はちごろうです。

最近、テレビは政権与党の総裁選の話題ばかりですね。

確かに与党第一党のトップを決めるということは

イコール総理大臣を決めるのと意味合いは一緒なので、

どうしたってメディアは報道しなければいけないわけですが。

ただ、政治って続き物というか、これまでの議員の過去の言動、

他の議員との関係、党内での立ち位置などが複雑に絡むものなので、

有権者とはいえ正直理解しづらいのも確かなんですよね。

個人的にはベテラン議員の意向で振り回されるよりも、

一旦刷新して若返りを図ってほしいものですが。与野党問わず。

では、映画の話。

「シャン・チー　テン・リングスの伝説」

マーベル・シネマティック・ユニバース初のアジア系ヒーロー作品。
歴史の裏で暗躍した暗殺集団の頭領を父に持ち、
現在は父や組織から隠れてアメリカで暮らす中国系青年が、
家族の過去と向き合うことになる姿を描く。
出演はシム・リウ、オークワフィナ、ミシェル・ヨー、トニー・レオン。

あらすじ

サンフランシスコのフェアモントホテルで配車係をしている中国出身のショーン。
彼は学生時代からの親友で、同じくアジア系女性のケイティと共に働いている。
ある日、二人はバスに乗ってホテルに出勤している途中、
数名のチンピラに絡まれ、ショーンの胸のペンダントをよこせと脅される。
しかし彼は車内でチンピラたちをカンフーで応戦、
彼の過去を知らなかったケイティはその姿に驚くも、
乱闘に巻き込まれたドライバーの代わりにバスを運転。
なんとか乗客を助けつつ、チンピラたちを追っ払うことに成功するが、
ショーンのペンダントはチンピラ達のリーダーで、
右腕に刀を仕込む謎の男に奪われてしまう。
アパートまで付いてきたケイティに事情を説明しろと詰め寄られたショーンは、
それまでひた隠しにしてきた自身の過去を彼女に教えることになる。
彼の本名はシュー・シャン・チー。
父は国際政治の裏で暗躍する暗殺集団「テン・リングス」の頭領ウェンウー。
ウェンウーは両腕にはめている計１０個の腕輪を自在に操り、
かつてはアジア諸国を武力によって征服していた。
そんな彼はさらなる力を求め、伝説の村ター・ローを目指す。
自在に動く竹林に守られたその村に辿り着いたウェンウーは、
そこでカンフー使いの女性イン・リーと出会い、格闘の末に負けてしまう。
それをきっかけに二人は恋に落ち結婚。
イン・リーは村を去り、ウェンウーは腕輪を封印。一男一女を儲ける。
しかしイン・リーの死をきっかけにウェンウーは再び腕輪をはめ、
息子のシャン・チーを殺し屋として鍛え始める。
そして彼は１４歳になったとき、初めて暗殺の仕事を任せるが、
シャン・チーは仕事に失敗。そのまま逃げるように渡米したという。
そんな彼に数日前、妹シャーリンからハガキが届いていた。
シャン・チーは今回母の形見だったペンダントが奪われ、
次は妹に身の危険が迫ると案じた彼は手紙の消印を頼りにマカオに向かう。
それをきっかけに、シャン・チーは自身の過去、
そして家族について向き合うことになるのだった。

フェーズ４、ようやく始まる

２年前の「アベンジャーズ／エンドゲーム」が内容的にも興行的にも大成功で幕を閉じ、
いまＭＣＵはフェーズ４、つまり第４章に突入したと言われてるんですが、
実は「スパイダーマン：ファー・フロム・ホーム」以降の作品は
どちらかというと「エンドゲーム」の後日談というか、
初代アベンジャーズの面々の残した物語の残務処理的な意味合いが強かった印象で。
ドラマだと「ワンダヴィジョン」に「ファルコン＆ウィンター・ソルジャー」も
（すんません、「ロキ」はまだ観てません）、
それぞれ死に別れたり別の場所に旅立ったメンバーへの喪失感と、
そこから各メンバーがどう折り合いを付けるか、みたいな話だったし、
７月に公開された「ブラック・ウィドウ」も彼女とその「家族」の話だったけど、
アベンジャーズの中でも単独作品のなかったナターシャの物語について
一応語っておこうという側面が強かったわけですよ。
でも今回はこれまでのヒーロー達と接点のない、新たなヒーローが誕生するという点で
ようやくフェーズ４の出発点に立てたんじゃないか？って感じがします。
ただ、一応触れておきますが、作中には当然それまでの作品の流れも残ってて。
まずタイトルの「テン・リングス」。
これは国際政治の裏で暗躍する暗殺集団なんですけど、
最初にＭＣＵに出てきたのは「アイアンマン３」。
ここでマンダリンという男がテン・リングスのボスとして表舞台に出るんですね。
それと、作中には「ドクター・ストレンジ」のウォンなど、
これまでのＭＣＵのキャラクターが脇役として複数人登場します。
また、もちろん作品の舞台は「エンドゲーム」後、
いわゆるサノスの指ぱっちんとそこから再び人々が戻ってきた後の世界なわけです。

さて、今回はＭＣＵ初のアジア系ヒーローの誕生ということが話題で。
主人公はサンフランシスコのホテルで配車係をしてるショーン。
でも実は中国の暗殺集団を家族に持つという秘密があるんですが、
ショーン自体はただのアジア系住民として街で暮らしてるんですね。
しかも彼は４カ国語を話すエリートなのに就ける仕事はホテルの配車係。
そして学生時代の親友で、同じくアジア人女性ケイティもまた
ＵＣバークレー校という名門大を卒業する才能があるのにショーンと同じ配車係をしてる。
そういった、現在の移民社会アメリカが抱えてきた問題、
才能がありながら見合った仕事に就けないというのにも触れているわけです。
ただ、二人の場合はちょっとまたそれぞれが抱える事情があって、
ショーンは家族に見つからないようにひっそりと暮らす必要があるからだし、
ケイティは頑張ることが苦手というか、器用貧乏というか、
ある程度出来ると満足してしまってそれ以上の努力を怠るクセがあって。

ただ、内容自体はわりと既存の設定が多かったりするんですよね。
暴力に満ちた家業に嫌気が差して家を飛び出した主人公、
一度失った愛を取り戻すために暴力にのめり込んでいく父、
その血塗られた家族の歴史を断ち切るために父と向き合う主人公・・・
なんかこう、「ゴッドファーザー」と「スターウォーズ」を
足しっぱなしにしたような感じとでもいうんですかね？
いまリメイク版が放送されてるアニメ「シャーマンキング」に
似たような設定のキャラが出てきましたよね。タオ・レンでしたっけ？
暴力を家業にする一族の物語ってのは、
たいていこんな感じに落ち着いちゃうのかも知れませんけど。

で、今回はやはりアジア系のヒーローということで
戦闘は基本的に近接格闘、それもカンフーを主体としてるんですね。
ただ、いままでハリウッド映画でカンフーを扱った作品というと
どちらかというと「カンフーで戦うこと」が目的化してて
なんかいかにもカンフーっぽく戦ってます、って印象になっちゃうことが多くて。
一番わかりやすいのが年末に新作が公開される「マトリックス」の１作目ですね。
キアヌ・リーブスとローレンス・フィッシュバーンが初めて戦うシーンとか
すごいぎこちないんですよ。段取り通りに身体動かしてます、って感じがすごい。
でもさすがに今回のアクションシーンはスピード感が違う。
あー、ちゃんと長年訓練を受けてきた人が戦ってるなぁって感じもするし、
また各キャラのプレイスタイルというか、技の繰り出し方の違い、
そしてその変化によってキャラクターの成長を描いてるところも
観てて楽しいんですよ。幼稚な感想だけど「本格的だなぁ」って思っちゃう。

さらにね、今回シャン・チーの父親役で登場するトニー・レオン。
もう、彼が登場するだけで作品がグッと引き締まるんですよ。
ホントにその場の空気を一瞬で持って行っちゃう。素晴らしい！
９０年代からその名前は知っていたけれど、普段アジア映画って観ないから
アクション映画に出てるイメージがあんまりなかったんですよね。
「悲情城市」とか「ブエノスアイレス」「ラスト、コーション」みたいな
ドラマに出てる印象が強かったんですよ。
でも改めて調べると「ＨＥＲＯ」とか「インファナル・アフェア」とか、
アクション映画にも多数出てるし、また観に行ってるんですよね。
すっかり忘れてしまってる自分を反省しましたけど。
機会を作って初期作品から観直したいなと思った次第です。

また技術的にも、序盤のバスでの格闘シーンや、マカオの建築中のビルの足場とか、
そういった狭い空間を自在に動くカメラワークも楽しかったです。

ただ、本作は主人公シャン・チーの誕生譚であり、
父親との確執と和解にどうしても力を入れているため、
女性キャラの描き方に若干物足りなさも感じたんですね。
例えばヒロインのケイティ。彼女は努力することを嫌い、
ある程度のレベルに達すると物事を投げ出してしまうクセがあるんですが、
ケイティは終盤、ター・ローの村で弓使いを学ぶことになり、
それが最終的にシャン・チーの窮地を救うことになるんですね。
この、彼女の弓の習得をもう少ししっかり描いた方が良かったのでは？と。
それとシャン・チーの妹シャーリン。
彼女は母の死をきっかけに再び力を追及し始めた父と、
その要求から逃げた兄の陰で孤独を抱えてきたわけですよ。
そしてシャーリン自身は家業を背負う野心があったのに
女だからと父から武術の訓練を禁止されていたようだし。
そういう葛藤にももう少し目を向けて欲しかったとは思います。

でも全体的にはさすがはＭＣＵ、新たなヒーローの誕生譚として、
そして新たなアベンジャーズ・サーガの実質的なスタートを飾る作品として
非常に良く出来た作品でした。