朝が来る。太陽が昇る。私はベッドから起きて朝食を取る。
何も変わらない。そう、地球と何も変わらない。
私は長い旅を経てこの星へと辿り着いた。
驚いたのは、青い空、緑の大地、青い水。自然は地球とほぼ同じ。細かな所に違いはあるが、成分は地球産のものとほぼ同じだ。
そして、この星に住む人間もまた地球人とほぼ同じ。
頭があり、胴体があり、左右一対の手足がある。違いと言えばこの星の人間は右手が4本指、左手が6本指、それくらいだ。
さらに言えば、言葉もそれほど変わらない。
日本語と英語ほどの差も無かった。言うなれば、標準語と関西弁くらいの違いだった。
だからこの星の人たちともすぐに意思疎通が取れた。歩んできた歴史や文化もそれほど違いが無かったからだ。
ここまで違いが少ないと、もし地球とこの星を隣に並べて間違い探しをしたら、かなり高難易度の問題になるだろう。
この星の人たちは地球人から見れば、間違いなく宇宙人である。
だが私はどうしても納得できなかった。
子供の頃から夢見ていた宇宙人との邂逅。
それはもっとドラマチックになるはずだった。
映画やマンガで見てきた宇宙人はどこにいる?手足がたくさんあるタイプ、首が長いタイプ、機械のような体を持つタイプ、常に何かの液体の中にいるタイプ。
そんなやつらはこの宇宙にはいないのか?
このどこまで広いか分からない宇宙には結局似たような生物しかいないのか。
人間だけではない。この星には犬のような生き物もいるし、猫のような生き物もいる。正直、時々自分が地球にいるのか、宇宙にいるのか分からなくなるときがある。
軽く失望を覚える私に、この星の人はさらに追い打ちを掛ける。
なぜなら、この星もまた別の星と交流を持っており、その星もまたほとんど違いが無いと言うのだ。
言葉も、関西弁と博多弁くらいの違いしかないらしい。
今や宇宙に夢は無いのか。ふとそう思ってしまう。
しかし、ここまで似たような星ばかりしかないとすると何かしらの意図が働いているのではないかと思ってしまう。

「はあぁぁぁ・・・」
重いため息がその場に一帯に広がるようだ。
「どうした?何かあったん?」
「いやさ、新世界の企画書を出したんだけど・・・」
宇宙のとある場所。そこではこの世界を造り出した創造主たちが日夜、宇宙の管理を執り行っていた。
「なるほど、ダメだったわけだ。ちょっとその企画書見してみ」
同僚からひったくるように一枚の紙を取り上げて目を通す。
「・・・はぁ、こんなん通るわけないじゃん」
「いや、でもさ新しい世界を創るんだったらこのくらいはしないといけないと思うんだよ」
「バッカだなー。世界創世にはテンプレートがあるんだから、それにならってやればいいんだよ」
「でもそれだと、毎回似たような世界しか作れないじゃないか。同じようなものばかりだと、何かあった時に総倒れになる。ある程度環境とかバラさないとだめなんだ」
「いいんだよ。俺たちみたいな下っ端がそんなこと考えないで。長い物には巻かれとけ。前例にならっときゃいいんだよ。どうせ給料同じなんだから」
「でもなぁ・・・」
まだ彼は自分の作った企画に未練があるようだった。
宇宙は広く、可能性はあるはずなのに、やっていることは慣例的で一様なことに彼は不満も持っていた。
だが、まだ我を通すだけの実力も地位も彼には無い。
「まあ、あと10000年くらい働けば出世もするだろうから、それからでも遅くはないんじゃね?」
「そうかなあ」
宇宙の進化の歩みの遅さに彼は不安を感じていた。このままで本当にいいのかと。