明日はいつも明日ではなく、特別な明日だ。
一年最後の日。明日からは新しい年になる。
そんな新年の最初の朝を特別な場所で迎えたいという人間は大勢いる。
特に最初の朝日、初日の出を拝みたいという人間はとりわけ多い。
その中でも一番いい場所で初日の出を見ようと、この最後の日に一年で一番気合が入っているかもしれないやつらが集まっていた。
各々がとてもではないが、穏やかな気持ちで新しい年を迎えようという姿ではなかった。
大剣を背負っている者もいれば、分厚い鎧に身を包んでいる者もいる。槍、弓、斧、武器も様々。重装備の者たちに紛れて、ローブや杖を装備した魔術師たちの姿もあった。
皆、緊張した面持ちだが、どこか楽しそうでもあった。
これから彼らが挑むのはとあるクエスト。
魔竜オオミゾーガの討伐である。
霊峰フジィを縄張りにしている魔竜を撃退せよというギルドランク5の高難易度クエストであり、一年に一度だけ、この日に解禁されるのである。
なぜかといえば、この霊峰フジィからの初日の出が世界で一番美しいとされているからだ。
だが、魔竜オオミゾーガがいるため普通の人間では山頂に辿り着くことなどできない。
だから明日、新年の一日だけ魔竜をフジィから遠ざける、それが毎年この日限定のクエストなのだ。
あまりにも魔竜が強いので、これだけの歴戦の強者を集め、倒すのではなく一日だけ遠ざける、それが限界であった。
だが毎年上手くいくわけではない。魔竜を撃退できず、返り討ちにされることも珍しくはない。
そうなれば当然、その新年は霊峰での初日の出は拝むことができない。
だからクエスト参加者は皆気合が入っているのだ。このクエストが成功するかどうかでその年の運勢を占う、そんな見方をする者も多い。
クエスト隊の隊長に任命された男が、参加者たちの前に立つ。いよいよクエスト開始である。
隊長が今年一年を振り返る話をし、次の新しい一年に向けて気合を入れた。
参加者たちも各々の武器を天に振り上げ、雄々しく叫ぶ。
そして彼らは霊峰フジィへと入っていった。
果たして明日の朝、彼らが見るのは輝く光か、それとも・・・