そこに空は無かった。いや、空という概念さえ、そこに住む人々にあるのかすら分からない。
地面も壁も天井も、同じような灰色に包まれた空間。
トンネルの国。そこは狭く、しかしどこまで続いているか分からない長い長い空間がずっと続いている。
そのトンネルは分岐し、その先でさらに分岐を繰り返し、地面の中を複雑に絡み合うように領域を展開している。
しかしどれだけ地中を進もうが、分かっていることが一つ。
いまだ、地上に出る道は発見されていないということだ。
どこかにあるのか。それとも元々無いのか。だが、人々の間では自分たちの遥か頭上にあるという地上という名の伝説が語り継がれていることからすると、どこかにその伝説に繋がる道があるはずだと、今まで多くの者がトンネルの中に冒険を挑んでいった。
その挑戦の数は同時に挫折の数でもあった。
それでも人は暗く長いトンネルの外を夢見ることをやめない。
トンネルの中を照らす火や人工の灯りではなく、トンネルの天井よりさらに高く、比べることもできないほど高くから降り注ぐと言われている光を求めて、トンネルの中を進んで行くのだ。