美しさの定義は、時代や場所によって大きく変わってくる。しかしそれでも、美しさという概念を人々はいつの時代も追い求めているのは間違いない。
そしてそれは、遠い未来でも同じことだ。
色とりどりの煌びやかなライトがステージを照らし出す。
広い会場の真ん中を貫くように伸びたステージの上では、自らの美に絶対の自信を持っているモデルたちが歩いている。
袖から出てきて、ステージ上を歩き、ステージの先端でポーズを取って、振り返って戻っていく。
遥か昔の、この伝統的な形のステージが今回のショーで選ばれたのには理由がある。
テーマは「原点」だからだ。
ファッションショーは今でも、年に何回も開かれている。
しかしそれらの中で疑問を持っている者たちが少なからずいた。
本当の美とは何か?
ファッションショーなどで現しているのは、結局は服飾の美。誰かが着る必要があるのか?極論マネキンに着せても同じではないか。
美とは生命のみが発することのできる輝きのことを言うのだ、と考える者たちだった。
歴史的な絵画を見ても、美しいものとは、何も身につけていない体のこと、つまりは裸である。
そんなわけで、始まったのが全裸でのショー。
これにより「裸の王様・女王様」を選ぶのだ。
ただし、この大会を企画した者たちは変わっていた。
真の美しさを感じる心とは、そこに一片の下心なるものが混ざっていてはいけない、と提唱していた。
美しさとエロスは切り離せないものだが、そのエロスとは神聖な感覚であって、決して下卑たものではないというのが彼らの考えだった。
そこで、この全裸でのショーには条件があった。それは異星人が審査員を務めるということだ。
今回で35回目を迎えるこのネイキッドショーは地球で開催された。
もちろん、審査員も観客も皆地球人である。
今、ランウェイの上には何人ものモデルが歩いている。
当然全員が全裸ということなのだが、そこにいるのは、地球人から見たら全員異星人である。
全身が猫のような毛皮に覆われた者。8割方液体状の体で、半透明の体の中に色々な球体が浮かんでいる者。金属的な光沢を放つ、ほぼ長方形の物体が空中を進んでいる者。
改めて言うが、このモデルたちは全員全裸だ。
もし、それぞれが母星の往来でこの姿で歩いていたら、即逮捕されるだろう。
だが、もし地球で同じことをしても、ほとんどの地球人は何も気づかないと思われる。
これが、このショーの目的だ。
下心無しで、純粋に美しさを見るわけだ。
そして、今回の地球大会で優勝したのは、惑星オーブから出場した、ルビーやサファイアを思わせるような輝きを静かに放つ体を持ったモデル、エーデルノートさんだった。
次回大会は惑星パティ―アで開催される。そこでの大会は地球人も出場予定だ。