少し離れた所から、その様子を見つめる者たちがいた。
彼らはただ見つめていた。いや、それしかできなかったのだ。その間、彼らは自分たちの無力さを感じることさえできなかった。
「・・・これで、我らの楽園に立ち入ることはできなくなった。我らは追放されたのだ」
「もはやあの壁の向こうには戻れぬ」
「一体、我々はこれからどうすればいいのだ・・・」
「・・・・・・・」
その場にいた数名の者たちは、だれもこれからのことなど分かるはずもなかった。
「あの場所で無ければ、我らは安心して自らを解放することができない」
「あの場所以外では、危険が大きすぎる」
彼らの誰も、これからの未来のことなど分かりもしなかったが、少なくとも明るいものではないことは容易に想像できた。
誰もが絶望の淵で、今にもその底へと体と心が落ちかけようとしていたその時、
「探そう」
ある者がそう言った。
「探そうでは無いか。新しい楽園を」
「だが、そんなもの本当にあるのか?」
「それは分からない。だが、無いということも分からない」
いつの間にか、その場にいた全員がその者の言葉に耳を傾けていた。
「ただ一つだけ分かっていることはある。今日この日、ここから歩き出さなければ、我らには希望も何も無いということだ」
その言葉に、彼らの瞳にほんの僅か光が灯った。それは少しの風が吹けば消えてしまいそうなほどか細く、頼りないものではあったけれども。
そして彼らは歩き出した。新たなる地を目指して。
この日は、とある公園の砂場が猫のトイレと化し、フンの被害が酷いということで、猫が入ることを防ぐ柵が立てられた日だった。