「ふぅ、またここからか」
既にうんざりとかがっかりとか、そんな気持ちはどこかに置き去りにしてしまった。
ベッドから起き上がると、枕元に置いておいたノートにさっそくいろいろと書き出す。これも完全に習慣になってしまった。
「やっぱり、力を持ってるからって安易にあんな連中に助力を求めるんじゃなかったか。でもそうなると他に都合のいい手があるか・・・?」
しばらくベッドの中で思案にふけった後、起き上がり、顔を洗い着替えて、朝食を取る。
その間中ずっと頭の中にあるのは同じことだ。
これももう慣れっこだ。
ことの発端は突然のことだ。
不思議な夢を見た。それは宇宙が崩壊する夢。
最初は変な夢くらいにしか思わなかったが、その夢を見てから1週間後、その夢は現実となった。
崩壊する宇宙。全ての法則が崩れる中で自分の体も心も消滅していくのを実感した。
そしてその後、俺は自分のベッドで目を覚ます。
時計はあの夢を見た後の朝に戻っていた。
何が何だか最初は分からなかった。病院に行ってみたがどこにも異常は無し。
そしてまた1週間後、宇宙は崩壊した。
そしてまた元の朝へと戻る。
どうやらこの崩壊を止めない限り俺はずっとこの1週間を繰り返すはめになるようだ。
夢の中で崩壊する宇宙。それの原因は分かっていた。
100万を超える惑星からなる星団連邦政府、その上位議員の一人の男だ。
たかが辺境の一軍人である俺が近づくにはあまりに遠い存在。
だが、やるしかないと腹を括った俺は行動を開始した。
それから分かったことだが、俺がループする条件は二つ、タイムリミットに間に合わず宇宙が崩壊することと、この1週間の間で俺が死ぬことだ。
一度、無理やり議員庁舎に押し入ってテロリストの如く、例の議員を射殺したことがある。
その後すぐ俺も警護隊に殺されたが。
それでも戻される。ただ原因の男を排除すればいいという話ではないようだ。
1週間という時間を一瞬たりとも無駄にすることなく、最適解を出しながら進むしかない。
昔、ゲームをいかに速くクリアできるか競うという遊びを見たことがあるが、それを今自分自身でやっている気分だ。
「待てよ。あそこの場面をこう変えれば、上手く流れを変えることができるかもしれない」
同じ1週間、しかし決して同じではない1週間がまた始まる。