星の数ほどある仕事。どんな仕事にもプロフェッショナルが存在する。今回はそんなプロフェッショナルの一人に密着してみた。
「この仕事ですか?最初はアルバイト感覚だったんですよ」
もうすぐ30になろうとしている彼は笑いながらそう語る。
「別に最初からこの仕事をしたかったわけじゃないんです。むしろ軽く見てた方が大きいかな?でも割と時給が良かったので」
彼はどこにでもいる普通の青年だった。普通に中学高校大学行き、普通にお金が欲しくて普通の友達に誘われてこの仕事をした。
「とりわけ特技があったわけじゃないですけど、体力には自信があったからいけると思ってました」
そんな普通の彼は、普通に社会の厳しさにぶち当たる。
「想像以上でしたね。体力に自信があったのは単なるうぬぼれでした。めちゃくちゃ疲れるし痛いし、その割には報われないしで。ある程度稼いだらすぐ辞めてやろうと思ってました」
しかし、彼はそこで思いがけない出会いをする。
「この仕事をしているのは若いやつばかりなんですけど、その中に40近いおじさんがいたんです」
彼はしみじみと当時を思い出すように語り出した。
「珍しいから、その人と話すようになったんです。その人奥さんと二人の子供もいるのにこんな体力勝負の仕事してたんですよ。もっと他に仕事あるだろうに」
彼は半分すごい半分呆れが入ったように笑った。
「なんでこの仕事続けてるんですかって聞いたらただ一言、愛着がある、だったんですよ。すごいですよね。ただ好きになった仕事だから、それだけで続けるなんて」
彼に、そのおじさんはその後どうなったのか聞いてみた。
「長年の努力が認められたんでしょうね。今は上に行って、俺たちの上司ですよ。現場の気持ちがよく分かるいい上司です」
彼はそのおじさんの影響を受け、今もこの仕事を続けているらしい。
「俺もせっかくの人生だし、何か一つ突き詰めてやってみたいと思ったんですよ。そしたらいつの間にかこの仕事続けてました」
彼は今や多くの後輩を指導するリーダー的立場だ。
「最近はこんな仕事は益々敬遠される世の中じゃないですか。だから俺はこの仕事の魅力をもっと伝えたいと思ってるんです。そのためにはもっと上に行くのもいいし、ここで頑張るのもいい。ま、なるようになりますよ」
終始笑顔で語る彼。どんな仕事も楽しいことばかりではない、つらいこともあるはずだ。きっと彼はそんなつらささえも魅力に見えているのだろう。
その時、彼の携帯が鳴った。
「はい、はい。出動ですね。分かりました」
短く答えると、彼は仲間たちに指示を出す。
その姿は先ほどの笑顔とは打って変わって、これから戦場に向かおうとする戦士のような厳しい顔つきだった。
「よし!お前ら行くぞ!今回は都内を輸送されるエネルギー物質エネルギンの強奪だ!間違いなくゲキレツジャーも来るだろう。俺たちはいつものようにやつらを迎え撃つ!倒せればそれでいいが、目的は足止めだ!」
彼らはそれぞれのやり方で気合を入れると一斉に歩き出す。同じ黒い衣装は仲間の証だ。ヒーロー戦隊と戦う戦闘員。たくさんいて、見分けがつかない彼らかもしれない。しかし彼らは一人一人が誇りも持って今日も戦いに赴くのである。