屈強な男たちが並んでいる。
手に手に持つは、剣や銃、どれも彼らが命を預けてきた大切な相棒だ。そして、身を守る防具も付けて全員正面を向き、整列している。
誰もが死線を潜り抜けてきた者たちだと一目で分かる。そんな彼らよりもさらに一段上の雰囲気をまとった男が彼らの前に立つ。この男が彼らの隊長である。
「諸君、本日の我らの仕事は、この先のヒットハリヤ遺跡最奥の魔人討伐!」
一度、隊長がそこで息継ぎをする。
「に向かう勇者殿一向のサポートである!」
世界の全ての人間にはそれぞれ役割がある。
今、この世界を揺るがす魔王や魔人、魔女等の脅威を払えるのは勇者一行しかいない。しかし、それら強大な敵の前にはその護衛となる悪魔や魔物も大量に存在する。
そんな有象無象に勇者たちの力を削らせるわけにはいかない。可能な限り万全の状態で真の戦いに向かってもらわなければならない。
そのための先陣、勇者たちのための道を先に切り開き安全を確保する。
そう、彼らは「安全部隊」と呼ばれていた。
「今回のミッション、最重要注意ポイントは悪魔系モンスターの幻惑魔法。そして遺跡までの道のりの足場が悪いことだ。モンスターに注意しつつ足場の確認も怠るな。後はいつもの基本をしっかり守れ」
隊長がその後も一通りの注意事項を伝えたあと、最後のシメに入る。これが安全部隊必須の儀式となっている。
「対悪魔製聖属性付与装備一式!」
「「「よしッ!!」」」
全ての隊員が隊長の後に続き声を上げる。
「神儀礼済み術式符3束!」
「「「よしッ!!」」」
「特製ポーション10個!」
「「「よしッ!!」」」
「今日も一日―――」
「「「ご安全にッ!!!」」」
全員が一斉に駆け出す。各々の武器を手に。
安全。欠けることなく、安らかであるという意味。
彼らは走る。今日の安全と明日の平和のために。