「櫻井先輩!!!本当にすみませんでした!!!!!」

「いいよ。もう大丈夫だから」

「本当に本当に!すみませんでした!俺・・・とんでもないことしちゃって!」




菊池は来てすぐ土下座で翔に謝罪した。
そんな菊池を翔は優しく席に座るよう誘導する。




「菊池こそ身体大丈夫?派手にやられてるね?」

「俺は自業自得なんで!!!
ていうか俺の心配してくれるって、なんなんですか!!!」

「なんなんですかと言われても・・・」

「先輩優しすぎますって!!!御仏さまですか!!!」

「あははは。俺だって嫌なことは嫌って言うよ。」

「じゃあどうして・・・」

「仕事だったから。別に菊池のためとかじゃないよ?こういうのも俺の仕事なの。」




翔は菊池に優しく笑いかける。
菊池はその顔を見て嫌悪的な顔を向けた。




「どうしてですか?先輩・・・
こういうのも仕事って・・・おかしいですよ」

「え・・・」

「社長に言われたってことですよね?」

「そうだけど・・・なに?」

「なに?って!おかしいですって!!!」

「おかしくないよ。」

「社長は酷い人です!先輩への扱いがいつも目に余るものがあります!!!」

「酷い人じゃないよ?
社長は仕事も一生懸命だし会社のこともよく考えてるし、ああ見えてプラベなんかもほとんど仕事してるんだよ?すごい人なんだから。」

「確かに仕事や社長としての姿勢はいいですよ?でも先輩への態度が酷いです!!!」

「別に俺はいいんだよ。
酷い、と思われるような扱いをする価値しかないんだから。」

「何言ってるんですか!!!」

「事実だから。」

「先輩っ!!!!!」

「菊池は知らないだろうけど、社長は口には出さないけど、社員のことも真剣に考えるような社長なんだよ?会社の部署を回る事もよくしてる。人事部部長には時々困ってる社員がいないか尋ねたりもしてる。」

「俺が言ってるのは先輩に対する社長の態度です!!!みんな言ってますよ!酷いって。まるでどっ・・・!」




そこで菊池はストップする。
でも翔はお構いなしに続けた。



「まるで奴隷?
・・・ふふふ。別にそれでいいけど。」

「・・・先輩」





「まぁ菊池も疲れてるんだからさ?せっかく来たんだし、ゆっくりして?コーヒー飲みなよ?」

「先輩は自分のこと、わかってなさすぎですよ・・・先輩の事を慕ってる人がどれだけ社内にいるか・・・
仕事も出来て優しくて頭が良くて誠実で・・・みんなみんな先輩のこと・・・
先輩のことをっ・・・
本当は・・・オレも


「まぁ落ち着けって。菊池。
俺のこと心配してくれるのありがたいけど、社長はそんな悪い人じゃないからね?みんなで会社を盛り上げて行こう?な?」


「これ。興味ありませんか?」

「え?」



菊池は
資料と共にある人の名刺を机に置く。





「セトグループ社長の井ノ原さん・・・実は俺の叔父なんです。」

「え?あのセトグループ?」

「相葉ホールディングスとはライバル。1、2をいつも争ってますよね?
俺は勉強のためこっちに就職しましたがいずれ叔父のところへ行きます。叔父が先輩にすごく興味があるってことで、引き抜きたいと・・・どうですか?会ってみませんか?」

「・・・会える、の?」

「はい。先輩が都合がいい日を教えてください。もちろん社長には秘密にしておきます。」

「・・・」

「先輩?悩む必要あります?」

「ちょっと、考えさせて?」

「いいですよ。」






翔がその資料と名刺を手にしようとして
コーヒーを飲もうとした菊池の手とぶつかり、少しだけコーヒーが菊池のズボンにこぼれた。



「ごめんっ!大丈夫?!」



すぐさま
翔は菊池のズボンをティッシュで拭き取る。



「わ・・・黒いズボンとはいえシミになるな・・・すぐに洗わないと💦脱いでもらっていい?替えの服用意するから・・・」


翔は夢中になって下を向きズボンを拭く。
菊池はそんな翔を直視する。




「先輩・・・・・」

「ん?」



下を向いて拭きながら聞き返す翔。





「それって・・・誘ってます?」

「え?」





思わず顔を上げた翔の肩を

菊池はガシッと

アツく噴き出るような力で





掴んだ。