翌日10:00




約束の河川敷に来た。






見ると雅紀はもう来ていて・・・

斜面に座って待ってくれていた。




「ごめん・・・待たせたよな?」


「ううん。大丈夫。俺が時間より早くに来てただけ。」


「あ・・・うん」


「出張・・・どうだった?大変だったろ?」


「うん。決まったのが突然だったから、バタバタ行ったし・・・やっぱりちょっと大変だった。」


「お疲れ様。」


「ありがとう。翔ちゃんも音楽の仕事を本格的にやってるんだってね?ブッキーさんから聞いた。」


「あ、うん。俺も昨日は出張行ってたんだ。」


「楽しい?」


「うん。」


「良かった。」


「ありがとう。」







シーン・・・






雅紀の様子はいつもと違ってた。


いつもはうるさいくらいに眩しい笑顔を向けておしゃべりが止まらなくなるのに

今日は

俺の顔をあまり見ようとしない。

目線を、俺とは合わさないまま

真っ直ぐに川の揺らぎだけを見ている。






「ま・・さき・・・」


「ん?」





心臓はドキドキ破裂しそうに音を立て

手先が震えるような感覚がする。




「あ・・・何もかも・・・知ったんだ、よな?」


「うん」





どう考えても雅紀のその反応は

受け入れるそれではなく・・・


俺は

この後、雅紀からフラれるんだという事を確信せざるを得なかった。


それでもちゃんと言わなくてはならない。


何年も雅紀に真実を告げずに

雅紀自身を避けて生きてきた。


そんな傷付け方をしてきたのに

最終的には・・・

俺を、3体も生み出し


それぞれが

それぞれの想い人のところへ行った。




そんな事

雅紀から、『嫌悪感しか持てない』と言われてもおかしくないんだ。






「あの・・・ごめんな。

3体も生み出してさ?

それぞれが愛してる想い人のところへ今はもう行ってて・・・」


「うん。」


「こんなの、気持ち悪い、よな?」


「・・・・・」








雅紀は

黙ったまま、何も答えなかった。