3年ぶりくらいでしょうか、Kさんが腰が痛いと御来店下さいました。
Kさんは近所に住まわれています。犬の散歩などでたまに会います。
語り口調がとても穏やかで柔らかい笑顔。こんな風に年を取りたいと思える紳士です。
腰回りを触れてみました。僕は言葉に詰まってしまいました。
ビックリするほど痩せてしまっている。
いつもどおり黙って目を閉じ、気を入れながら腰回りを擦り始めました。
元々スリムで顔もシャープなMさん。身体に触れるまでは分かりませんでした。
痩せた理由は考えるまでもなく、推測する必要もありません。
目を閉じ身体に入り込むと、グーっと胸が締め付けられます。
僕は何も言わずに施術を続けました。
昨年、記録的な猛暑の中、これから羽ばたいていこうという22歳の女の子が自ら命を絶ちました。
Kさんの娘さんです。
あまり多くを語らないKさん。その日は口が滑らかです。
原発の問題。気持ちがいい季節になった話し。子供たちの話し。
いつもどおり穏やかな口調。
うつぶせで見えませんが、ニコやかな表情が声で感じられます。
施術時間が残り10分くらいでしょうか、話しの流れから娘さんにたどり着いてしまいました。
「何も分かってやれなかったなぁ…親なのに何も分からなかった」
何が決定的な原因なのか、Kさんは今でも分からないままです。
娘さんは明るく人望もあり、今どきいない責任感の強い女の子だったと、他の方から聞いています。
気が利いて弱音など吐かない立派な子。
生きていれば何かしら悩む事だってあります。娘さんにだって、何かしらあったはず。
しかし、死を選ぶほどの事か?…とKさんの頭の中で「???」が繰り返されてます。
社会人になる直前で、不安になっていたのは知っていました。
それが原因か?そんなのが原因か?それではなく誰も知らない何かがあったのか?
「親なのに何も気づいてやれなかった」と自分を責め続けています。
1週間以上前から用意周到に消え去る準備がされていました。
面倒な手続きを残さぬようにしていたそうです。
このブログでは暗く締めくくる内容はなるべく避けています。
「死」をテーマにする事があっても、どんよりした空気にならないようにしてきたつもりです。
それでも今回はテーマに上げました。
僕は本来空気が読めなく、気を使えない人間です。
しかしセラピストの仕事をして人様の身体に触れるようになり、
いろんな事が見えてくるようになりました。
セラピスト気質の嫁さんの影響も大きいかと思います。
いつも笑顔で、場の空気を読みながら気を回せる。
愚痴を言うより親身になって愚痴を聞いてくれるような人は、
心がクタクタになっている事があります。
身体に触れると感じてしまったりします。とても疲れています。
回りにそんな人がいたら、気にかけてやって下さい。
「何か悩みある?」とか聞いても、何も言わないかもしれませんが、
それだけでも救われるはずです。