人生を変えた1枚のレコードと、親父の想い出

今は亡き親父が44歳の時、注文一戸建てを建てました。

35歳くらいで初めて購入した建て売り住宅が、時代も良く購入した額の3倍になっていたのです。

それを頭金にして、それまで狭かった家から引っ越したのです。

生真面目で贅沢は悪だと思うような父でした。

「欲しがりません！勝つまでは！」みたいな精神で、戦中を生きてきた親父です。

そんな親父が新築した時にリビング用ＡＶコンポを買いました。※画像拝借

当時の流行りでしたかね。場所を取るデカいオーディオでした。

贅沢は敵だ！…の親父にしては珍しい事でした。

家を買ったのだから、節約しなくてはいけない！…と考えるタイプだと思っていましたので意外でした。

更に珍しく、ねだってもないのに「レコード１枚買ってやるぞ！！！」と。

誕生日でもクリスマスでもないのに？親父が？

中坊心に「親父壊れたか？」と心配になります。

いくら前の家が高く売れたからと言って、ローンを組んだのは分かります。家具なんかも新しいのを買ってしまい、中坊ながら心配だったのです(我ながらいい息子)

今ならよく分かります。嬉しくて気が大きくなってしまったのですね。

当時の親父は44歳(昭和13年生まれ)。親父だけでなく、昭和10年〜30年くらいの日本は、どこも貧乏でした。戦争を経験していますからね。

家にいた鶏のタマゴを売り歩いて、学費にしていたと聞きました。

14歳の僕から見た親父は、生真面目で何が楽しくて生きているのか分からない人でした。

家庭に無関心で…と言うか当時のサラリーマンは家に居なかったですね。

週休1日が当たり前で、その1日も仕事がらみのゴルフだったりで家に居なかったです。

家族サービスという言葉は、存在しなかった時代だったかもしれません。

６ヵ月～2年とかの単身赴任もよくしていましたので、接する機会が少なく、笑った顔もほとんど見た事がありませんでした。

そんな親父がハイテンションではしゃいでいます。

「買ってやるぞ！！！」と鼻息荒く言われて、嬉しいより先にハイテンションぶりに後ずさりしてしまいました😅

「お、お父さん？？大丈夫？？」

今で言う"ひく"という感じでした（笑）

僕くらいの人間（50歳）は、みんなそうなのでしょうか？うちが質素すぎたのでしょうか？

誕生日・クリスマス以外に、何かを買ってもらうという行為は、あり得ないのです。ですから、ねだったこともありません。

当時の僕からしたら、その親父のハイテンションは、これから一家心中する前の「最後の晩餐」みたいなテンションに見えました。怖かったくらいです。

それくらい、親父はいつもブスッとしていて近寄りがたかったのです。記念日でもないのに、モノを買ってくれるなんて、中和田家ではあり得ないのです。

「あ…あぁ…ありがとうございます」
いつからか、僕は親父に敬語でした。

いきなりレコード買ってやる！と言われても、当時わざわざレコード買ってまで聴きたい音楽なんてありませんでした。

ザ・ベストテン

ザ・トップテン
（※20代の方は知らないですね。当時好視聴率音楽番組）

を見るだけで十分でした。

中坊ながら「いや、いらないよ」というのはハイテンション親父の厚意を踏みにじるような気がして、レコード店で何かないか探してみる。

ふとメーテルの絵が目に飛び込みました。

松本零士アニメが大好きだった僕は、「銀河鉄道999」というだけで、そのレコードを買ってもらいました。

正直、銀河鉄道999は好きだったのですが、ゴダイゴの主題歌以外全く興味がありませんでした。

銀河鉄道999は好きでしたが、音楽には全く興味がありません。そんなレコードだったのですが、買ってもらったから仕方なく聴いてみた。

レコード針が落ちた瞬間から…度肝を抜かれました！

身体中鳥肌が立ち、異空間に入り込んだんじゃないかと錯覚してしまうようなサウンド。

多感な時期でもあったので、物凄い衝撃的なサウンドです。

シンセサイザーだけで

宇宙を表現する。

闘いを表現する。

愛を表現する。

別れを表現する。

テレビで流れる歌謡曲しか知らなかった僕には、世の中にこんな世界があるんだ！と本当に衝撃的でした。

学校から帰宅すると夕食・お風呂の時間除いては、何回もリピートして聞いた１枚です。

この１枚で勉強も野球も恋も２の次になりました。

この1枚がきっかけになり、僕は音楽で食べていきたい！！！と思うようになりました。

あの１枚がなければ、全く違う人達と出逢い、全く違う人生を歩んでいたと言えます。

今いる妻とは結婚していないし、当然娘もいない。

今付き合いある友人とは、全く出会ってなかったはずです。

今の仕事にもついてなかったと思いますので、これを読んでくださっているだろうクライアントさんにも出会ってなかった。

音楽では食べていけませんでしたが、人生を変える感謝すべき一枚です。

ハイテンション親父のおかげです😀