ある日の営業。

43歳になるKは高校の同級生で腐れ縁の友人。Kが来店してくれました。

43歳だってよ!もう人生折り返しじゃん!

ハハハと笑い、店を後にしました。




次にご来店は美浦のKさま。

Kさまは43歳になる品ある方。イメージにあったエレガントな香水が微かに香ります。

きみまろがネタにする中高年ですねぇ~私も中和田さんも!

アハハと笑い、店を後にします。




そして43歳の同級生Hから10年ぶりくらいに電話が鳴る。仕事中の為「ゴメン仕事中だから後でかけて!」

Hからの電話が来る前に、今度は43歳同級生Tからメール。




訃報

Tちゃんが亡くなりました…通夜は……




Tちゃんは43歳の同級生。

短いメールを再度確認する。

親の訃報はたまに来ますが同級生はめったにない。

間違いなく小中高と一緒だったTちゃんの訃報。



Hの電話は訃報の件だった。



12年も同じ学校だったが、男女の違いという事もあり、あまり接点はなかったTちゃん。

しかし43歳の死はしばし呆然となります。



出しゃばらない静かな笑顔が、カタカタと映像になり脳裏に映し出されます。

思い出す顔は、穏やかな笑顔だけ。



明るく目立つタイプではなかったが、決して暗いタイプではない。いつも静かな笑顔だった。

これはセラピストを業としている僕が目指している空気感。




空気感は意識してできるものではなく、日々の生活から作られるもの。

根が雑な僕には、なかなか理想の空気感は出せません。




子供の頃は分からなかったが、Tちゃんは年齢以上に賢く大人だった。

あの空気感は、丁寧に生活していた証だったのだろう。




Tちゃんは双子。珍しい男女の双子。

双子の片割れMも小中高12年一緒。

中学まで仲が良かったが、高校に入りお互い新しい友人と付き合うようになり、自然と離れていっ
た。

別に喧嘩したわけではないがフィールドが変わっていった。

嫁さんも全く一緒の12年間同じ学校。みんな友達。みんな幼なじみ。

娘と3人で参列しました。




遺影を眺める。

双子だが男女双子は似てないなぁ…と子供の頃感じていたが、遺影の静かな笑顔はMに似ている。

当たり前か…。




20歳になるTちゃんの長女は、彼女が1歳くらいに抱っこした事がある。

Tちゃん・Mの母親の葬儀で会って抱っこした。母親は48歳での他界。

M「おふくろの記録更新しやがったよ」と、力なく笑った。



成人して美人さんになった長女を見ると、あまりにも早い月日を感じる。

静かだが真あるTちゃんの遺伝子だろうか、強く真っ直ぐ立っている。

失礼だが横にいる父親より大きく見えた。




Tちゃん

Tちゃんの子供の時より美人だよ(笑)君はこの世から去ったけど、君はここに居るね。




膵臓ガンでした。

調子が悪いと病院に行ったら余命1ヵ月の宣告。

宣告数日前には家族でディズニーランドを楽しんだばかり。あっという間だったらしい。




久々にMと話した。

あんなに仲が良かったのに、高校からは「おぅ」くらいしか言葉を交わさなくなっていた。



Mは繊細な絵が描けるアーティスティックな男だった。

繊細な絵を描けるような男は、43歳になっても繊細な身体。

中年太りとは無縁な繊細な体型が、僕には少し気になった。




心にとどめるのが嫌で、場もわきまえず華奢な肩を掴み、わざと冗談ぽくMに声をかけた。

「おまえ大丈夫なんだろうな」

「まいったよ。大丈夫じゃねーよ」Mは悲しい笑顔を見せた。

そして僕らは28年ぶりに連絡先を交換した。


今度会おうな




嫁さんは久しぶりに会う友人たちと出かけた。

僕は、娘にとってはもう遅い時間になっていたので娘と帰る事にした。





帰りの車

娘が聞いた


「お父ちゃんのお友達、
セラ ローズ のところ行ったの?」


「そうだよ…セラとローズがいる天国に行ったよ……。そうだ!お父ちゃんのお友達、聖子ちゃんが好きだったから、聖子ちゃん歌って帰ろうか?」


「そうだね」


Tちゃんが好きだったかどうかなんて本当は知らない。



ただTちゃんの想い出は、聖子ちゃんがピークの時代だ。


あの時代はファンであろうがなかろうが、皆んな聖子ちゃんの歌は知っている。



Tちゃん

Tちゃんだって口ずさめるでしょ?



♪ ピュアピュアリップス 気持ちはYES ♪


カーオーディオから流れる聖子ちゃんに合わせ、Tちゃんに向けて2人夜道を歌いながら帰った。



こんな何でもない瞬間一つ一つが、とても大切な宝物のような時間だよ


そうTちゃんからのメッセージが聞こえた。




冷たい空気が星空を綺麗に映す、冬の夜の出来事でした