高校の頃、勇太(仮名)の兄貴は、なんだかとても緊張する存在だった
それは僕だけでなく、友人たち皆だった
当時は携帯などない
自宅にかけるのが普通でした
勇太の家に電話すると、兄貴がよく出た
「はい田口です」
福山雅治なみの渋い声で落ち着いている。
何故だろうか、一気に緊張する
彼女の自宅に電話して、お父さんが出るより緊張する
「あの…ゆ…勇太くんお願いします」
軽くどもる
兄貴は茨城県1、2を争う進学校、土浦一高中退
さほど勉強せずに合格
「勉強飽きた」という理由ですぐ中退
そんな知的アウトローっぽいところがクール
ギターも弾き、めちゃくちゃ上手かった
それも「もう飽きた」とやめてしまった
飽きるくらい、短期間で極めてしまった。
そんなクールなところが、高校生の僕たちには刺激的にカッコ良かった
数えるほどしか会えなかったが、ワイルド系のイケメン
「俺とは違って兄貴は…」
勇太は自虐的に比べて言っていたが、自慢の兄貴だった
そんなクールな兄貴は、47歳にして散った
余命宣告から数ヶ月も経ち
桜舞い散る季節を選んで散っていった
兄貴、キザ過ぎるぜ
ご冥福
お祈り申し上げます