久方ぶりです。藤村です。
最近、東京医科大学が話題ですね。主に悪い意味で。
それに端を発し、医学部での女性・浪人生減点問題が表面化しつつあります。
労働力としての女性は男性に比べて…というのが言い分の一つのようですが、
どうも背景には、女性が大学に行くなんておかしい…的な価値観もあるような気がします。
そう、今のおじさん世代的には、女性が四大(四年制大学のことです)に行くこと自体珍しかったのです。
あれ、そもそも、女性の進学というのはどんな歴史的背景を持つんでしょう。
今回は数字面から見てみたいと思います。
①数字での進学率を見てみましょう
以前、私立大学の数の推移について記事を書きました。この中で触れましたが、要は
(1)日本の大学は、数字上私立大学によって支えられている
(2)日本の大学数は拡大→抑制、を繰り返しており、私立大学がその調整弁となってきた
みたいな感じです。当時はしかし、性別と進学率の関係についてはほとんど触れてませんでした。今回はそれを考慮していきたいと思います。
さてさて、女子の進学を論じる上で決して避けて通れないのは短期大学です。
短大の進学率推移はこちら。緑線が男性、赤線は女性、青線は総合です。
なんて言うかいい感じに山ですね。今や総合の進学率も5%と言ったところ。ピーク時には、女性の4人に1人が短大に行ってたんですねえ。
しかし短大自体、ピークには600校ほどあったのが、今は300校くらいです。
4大の進学率はこちら。
1990年以降急に進学率が伸びたのが目を引きます。
男女の差も、今に至るまでにだんだん縮まってきたような印象も受けますね。
短大、4大の総合の進学率はこちら。
あれ、男女の差があんまりないですね?
って言うか赤線=女性が、緑線=男性を超えている時期もあります。
高校卒業後、女性は進学するもんじゃない?いえいえ、決してそんなことはないのです。
②時は30年前を見てみましょう
さてさて、1988年の数字を見てみましょう。
短大進学率:男性は1.8%、女性は21.8%。合計11.6%。
大学進学率:男性は35.3%、女性は14.4%。合計25.1%。
短大と大学進学率:男性は37.2%、女性は36.2%。合計36.7%。
女性が短大に行く、男性が大学に行く、というのがある程度常識として機能していた時代です。女性も男性も、3人に1人が大学か短大かに行っていたのですね。
しかし地域差もあるでしょうが、女性は8人に1人しか四大に行っていませんでした。
③それと比して現在の数字はいかがでしょうか
短大進学率:男性は1.0%、女性は8.3%。合計4.6%。
大学進学率:男性は56.3%、女性は50.1%。合計53.3%。
短大と大学進学率:男性は57.3%、女性は58.5%。合計57.9%。
もう、女性も短大ではなく四大に行くのが普通になってきていますね。
④女子が四大に進学するのはどうしてか?
かくして女性も次第に四大へ進学するようになった、これ自体は複数の面から評価する必要があります。細かく数字を出せなくて申し訳ないですが、まずは、
a)高卒での就職が厳しくなる・景気が悪化し安定した職志向が高まった面
すなわち、従来、主な家計支持者が夫婦のうち夫だったとして、それが成り立たなくなった
=女性も進学しないと社会を再生産できなくなった
→社会的に女性の進学需要が増えたという面
があります。
女性が大学に行くなんて…なんて言ってたら子供が育てられません、ってことでしょうか。
もう少し数字でエビデンスを示すべきでしょうが、今回は書ききれませんすみません。
かつここには側面的に、
b)やはり私立大学が受け皿、調整弁として短大から大学へ移行した
=女性の進学需要を受け止めるだけの大学数の増加があった
c)学費は高いが、貸与型奨学金は発展し、進学自体はできなくない
=奨学金という名前の借金を借りることによって(是非はともかく)進学自体が出来るようになった
が要因としてありました。
その一方で、
d)高等教育が国民的に広く受けられるようになった
というもう一つの面もあるのでしょうが、これも深めていると深みにはまりそうなので別記事にしたいです。
⑤まとめ
女子が高校卒業後何かしらに進学する、この事自体は特に男子の進学と同じくらいありふれたことで、四大+短大の進学率は男子と女子で歴史的にも差がありませんでした。
特徴的な点は、四大への進学率です。かつて女子の四大進学率は男子に比べると低かったのですが、今はだいぶ拮抗しています。
このことを、国民的に人権意識が根付いて、女子も高等教育を受けることが人権であるという意識が広がった、とも取れますが、
他方、共働きでないと家計を支えられなくなったという面を見ずにはいられません。
今回は数字だけです。もう少し深いところは、また別の記事にしたいですね