家事ってものは嫌いではない。シンクに積もった食器の山が徐々に片付いていく過程がたまらなく好きだし、吸い取ったゴミのかたまりが捨てられるシーンを毎日見たいがためにサイクロン掃除機を買ってきたし、洗濯をしたシャツ・Tシャツ・パンツ・下着および靴下類・タオル・ハンカチなどなどが僕自身の作った秩序で物干しに整列しているのをうっとりといつまでも眺めてしまう。って、ここまできたらまったくもって「家事フェチ」だよね。
今の僕は、いわゆる「専業主夫」みたいな毎日を過ごしている。上記のような「家事フェチ」ではないけれども、まあはっきり言って嫌いではない。めんどうだと思わずにさっさとやってしまう、やっているうちに面白くなって徐々に凝りだして、遂には自分用の道具なんかを買い始める…確実にフェチへの道を歩んでいるのかもしれない。
かつては永年に渡りサラリーマンをやっていて、人並みに税金も納めてきたごくごく普通の人生だった。三年前の定年退職を機に、そろそろ人生も終盤なので好きなことをやろうかなと、バーのマスターなんかに転職したのだが、コロナであっけなくそれも終わってしまった。
僕がそんな風にドタバタしているうちに、妻の方では仕事を立ち上げたりして、なんやかや忙しい毎日になってきたのであった。数年前にカフェをオープンさせ、そこで始めた料理教室があれよあれよという間に評判となり、一気に多忙な人となったために急速に家にいる時間が少なくなったのである。
まあこちらはそれに呼応するかのように、お家時間だけになった無職のプーさん。「うちの奥さんは忙しいのだから、自分のことは自分でやろうね、おりこうさんだね」くらいの気持ちで始めた炊事洗濯お掃除。その面白さにまんまとはまってしまって、ある日のことです、「今日から家事は全面引き受けた。俺に任せて君はカフェと料理教室に専念しなさい」と、ちょっとだけ威厳を表現したかったので普段より低めの声で「主夫宣言」をしてしまったのでありました。
