昨年の春のこと、それまで2年間マスターを任されていたミュージックバーのオーナーから、突如の通告。「今月いっぱいで店閉めるわ」「え?実に急ですね」「いやいや、コロナだし…」「…それで?」

しかし、あとは無言、仕方ねーだろ、察すれよ、ってことなのでしょうか。

 

たしかにコロナの影響は痛いほど実感していたので、察することは容易くできたし、なによりも本音をいうとプータローってものを一度やってみたかったので、流されるままに無職になった。

妻はそれなりに忙しい仕事を持っているので、じゃあ当面は僕の役割として家事をやろうということで夫婦間の合意に達した次第でございます。

 

家事は嫌いではない。ずっと共働きだったので、これまでも「自分のことは自分でやる」「共通のことは手の空いている方がやる」を原則としてきた、だからひと通りはできるつもりだ。

でもこれからは、一手に引き受けるわけなのだ、つまり家事においては自分が主導権を握ることになる。これって思いの外、ワクワクしてくるのでありました、変なの。

 

実は、僕はサラリーマンも三十年近くやってきた。ごくフツーのサラリーマン。その期間はごくフツーに時間的管理をされてきたといえるし、当然のようにそれが身に付いていた。でも、バーのマスター経由のプータロー、もとい専業主夫になってみると、何と時間が豊富あることか!感動すらしてしまうのだ。

たとえば掃除をしようと思い立ったら雑巾を作るところから始める、晩ごはんを作ろうとしたらレシピ本を買ってきてさらに包丁を研ぎ始める。サラリーマン時代にはこんなことまどろっこしいことを発想するなんてあり得なかった、そうなのです、僕は新しく生まれ変わったのだ、だはは…だって、油断すると時間を持てあましている自分のことがなんとなく不安になってくるのだから。

 

毎日、そんなアップダウンな気分で主夫をやっています。でね、ときどき夢に出てくるのが、なにかの申請書みたいなものの「職業欄」に自分の仕事を書かなければならないってシーン。主夫として、まだまだ未熟なのかもしれないのですね。