あんたさぁ、なんでお尻のところがぶよぶよしているのよ

ぶよぶよ?

そう、足は毛も生えていないつるつるなのに

あ、これはね、おむつ

おむつってなによ?

おしっことかうんちとか出たときに外に出ないようにするもの

おしっことかうんち?いやだ、その中にたまってしまうの?

そうなんだけど

うわ、気持ち悪くない?

気持ち悪いよ、だから出ちゃったら泣いてしまうんだよ

泣いたらどうなるのさ?

お母さんが取り替えてくれるさ

めんどうくさいわね

でも、ずっとそうだったから

そのおむつとやら、外してしまえばすっきりするのに

きみはどうするの?おしっことかうんち出るとき

そりゃ出たくなったらそこで出すに決まっているでしょ

え?出たくなったところで?

そうよ、まあ、ちょっとは周りには気をつけるけれどね、これってオオカミの時代から持っている本能なの

…なに言っているのかわからない

それに「ここで出した」ってことを隠すために後ろ足で土をかぶせるのよ、これも本能

あそこに落っこちているのきみのうんちだよね

え?ああ、あれね、そうよ

隠れていないけれど

細かいこと気にしないの、土をかければ気がすむのだから

それも本能?

そうかもね、やらずにいられないのよ

でも、今日は天気いいよね

そうね、だんだん暑くなって、わたし暑いの苦手なの

それ脱いでしまえばいいのに

それって?

その白い服みたいの

ばかねぇ、これは私にくっついて取れないのよ

へぇ、じゃあ暑くなってもそのままかい

だから夏って嫌いなの

夏って?

そうか、あんたは去年の夏は生まれたばかりだったからね、これからますますおひさまが威張りだして、まぶしくなって、口からベロが出てきてハーハーいってたまんないわ

お腹すいてきたな

ちょっと、聞いているの?

お母さん、どこにいったのかな

見てみて、アリがチョウチョの羽を運んでいる

アリ?チョウチョ?

あんた、何も知らないのね

きみはいろんなこと、知っているのだね

まあね、わたしたちはあんたたちみたに長生きできないから、早く憶えないとすぐ終わってしまうのよ

終わるの?

そうよ、死んじゃうの

そんなこと言わないでよ

仕方ないじゃない、あんたは人間でわたしは犬なのだから

ぼくは大きくなっても君みたいにはならないの?

ならないわ、あんたは少しずつ大きくなって人間の大人になっていくのよ

君も大きくなるのでしょう?

そうね、あんたより早く大人になってしまうわ

でも、これからもずっとお話をしていようね

ずっとは無理よ

どうして?

こうしてお話ができるのは今だけ

今だけなのかい?

あんたは、これからいろいろなことを憶えていくでしょ、そうしたらお話しする方法を忘れてしまうの

忘れないよ

お話の方法だけではなく、大人になったらわたしのことも忘れてしまうのよ

忘れないってば、君のことが大好きだから

ありがとう、でもね、人間より先に動物とお話をしたら、その動物のことはあんたのなかから消えてしまうの

…なに言っているのかわからない

いいのよ、わからないままで。見てみて、今度はアリがバッタの足を運んでいるよ…