三年前、サラリーマンを定年退職してすぐに、知り合いの紹介でバーのマスターに転職したのですが、しかし昨年春、コロナの影響でお店は二周年目前に閉店、それからほぼ無職の男になりました。

「じゃあせっかくなので僕は暫く休養いたします宣言」をしたまま、だらだら過ごしていたっけ、なんてことでしょう早くも一年半経過。

 

もともと出不精だったので、本とCDとレコードとギターに囲まれたユートピア自部屋引きこもり生活にどっぷりと浸かっていたのですが、そんなことだから人と接するという機会がめっきり減った、どころではなくて皆無状態なのですよ。

 

妻が所用で数日間不在になろうものなら、日がな一日ひと言も喋らないなんてこともざらにあったりして。

近所のスーパーもコンビニもガソリンスタンドも、今やセルフレジだから無言で買い物が完結できてしまうし。

 

こんな毎日を過ごしているうちに、なんかこの頃は声を出すのが面倒くさくなってしまって、でもこれってさすがにちょっとヤバんじゃね、とか思い始めた次第でございます。

ヤバいというのは、これによって老化が加速していくのではないかという恐怖。

 

じゃあ努めて誰かと会話しましょうと思っても、今の僕の周りには友だちというものがほとんどいなくなってしまい、とりあえずというか、手っ取り早くというか、すぐ相手になってもらえるのは妻だけ。

でも、やってみてわかりました、会話を無理やり絞り出すというのもなかなか至難の業で、つい余計なことを言ってしまうはめになったりして。

 

「あのさ、明日の予定って何だったっけ?」

「え?私の予定?」

「そう」

「何で?」

「何でって、いや、時間があったらいっしょに出かけようかな、とか思って…」

「あのさ、明日は私が休みだからたまにゆっくり温泉に行こうって、この間決めたでしょ!」

「え?そーだったっけ?まず!…いや、あのその、明日って金曜日じゃ」

「土曜日!」

「ごめんごめん、それはあれだよ、サラリーマンやめてから手帳を持たなくなったでしょ、それで曜日感覚がわからなくなってきてさ…」

「ゴミ当番をサボるからでしょ!毎朝〝今日は何のゴミの日か″って確かめれば曜日なんてわかるでしょっ!」

 

なんてこった、夫婦の会話を弾ませようとしたはずなが、まさかの大炎上。

このショックで僕は老化が一気に進んだかもしれないな、って、気がついたらひとり言が増えていました。