はじめに
最近、Apple Musicに「オールタイム・リプレイ」という機能が追加されました。これは、過去10年間で自分が最も多く聴いた100曲を、自動でまとめてくれるプレイリストです。いわば、自分だけの「オールタイム・ベストアルバム」。ちょっと特別な感じがしますよね。
当然のことながら、好きでもない曲を何度も聴くことはありません。だからこそ、そこに並んでいるのは、自分が本当に気に入っている曲だけ。自分の音楽の趣味が、そのままリストになって表れているわけです。
そして、そんなプレイリストを眺めながら、ふと思いました。
「これを誰かと共有すれば、似た感性を持つ人が、新しいお気に入りの曲と出会えるかもしれない」と。人に何かをすすめるとき、「◯◯が好きなら、これも気に入ると思うよ」と言うことがありますよね。あの感じです。
とはいえ、ただ曲名を並べるだけじゃ物足りません。せっかく紹介するなら、「なぜこの曲が好きなのか」も一緒に伝えたい。それが100曲分あっても、やっぱりひとつひとつに思い入れがあるからです。
FUN CLUB/おとぎ話
“モラトリアム賛歌”
この曲を語るには、まず、おとぎ話というバンドが世に出たきっかけについて触れなくて はなりません。
彼らがデビューするに至った背景には、「当時、若者のカリスマ的存在だったバンド・銀杏BOYZに練習テープを送ったところ、ボーカルの峯田和伸に才能を見出された」という経緯があります。
では、峯田は彼らのどこに惹かれたのか?
おとぎ話の音楽は、なぜ彼の琴線に触れたのでしょうか。
個人的には、両者が「同じテーマ」を扱っていたからだと思っています。同じテーマ──それは、「青春」です。
ただ、ここで言う青春は、いわゆる“アオハル”的なキラキラしたものではありません。むしろそれとは真逆で、輝きとはほど遠い、濁流のような時間です。
自意識が肥大し、「自分を認めてくれる存在」に執着したり。明るかったコが急に暗くなったり、自分の感情に振り回されたり。
「世の中に対する無力感」と「無根拠な全能感」が、代わる代わる心を支配したり…。
そんな、ちょっとカッコ悪い青春。
当時の銀杏BOYZは、まさにそうした鬱屈とした感情を、真正面から歌っていました。
だからこそ、同じような価値観を持つおとぎ話の登場は、彼らにとって「理解者が現れた」と感じさせる出来事だったのかもしれません。
実際、今回紹介する「FUN CLUB」にも、若者が抱える「未来への不安」や「内向性」が色濃く表れています。
ただし、この曲が他と違うのは、若者本人(=銀杏BOYZ的な立場)ではなく、そんな彼らに手を差し伸べようとする“誰か”の視点で書かれているという点。閉じこもっていたい気持ちを汲み取りつつ、それでも外の世界に連れ出そうとしてくれる…。そんな温かさを感じさせる一曲になっているのです。
では、なぜここで描かれる若者は、“キラキラ”とはほど遠いのでしょうか。それは、歌詞にもあるように「君が涙を隠している」からです。
先ほども触れましたが、人の性格には、「外向型」と「内向型」という分類があります。外向型は明るく社交的で、人との関わりを楽しむタイプ。一方の内向型は、控えめで、自分の内側に意識が向きやすいタイプだとされています。
そして、「涙を隠す」という行為には、まさにその内向的な気質がよく表れています。
悲しみを誰にも見せず、心の中だけでそっと抱え込む──そうした振る舞いには、感情を表に出すことへの慎重さがにじんでいるのです。
一般的に、内向的な人は「明るくてキラキラした人」とは対照的な存在として見られがちです。つまり、「涙を隠す」ような内向的な人は、そうした“キラキラ”とは無縁の場所にいるのです。
自分の感情に蓋をして、まるで存在しなかったかのように振舞う「君」。
「FUN CLUB」では、そんな君に代わって「君の名前」を歌います。すなわち、外の世界に向けて存在を叫ぶのです。君は確かにここにいる、と。
この歌詞を初めて聴いたとき、私は、心に風穴を開けられるような衝撃を受けました。それくらい、深い感動を覚えたのです。
また、印象深い歌詞でいうと、他にもお気に入りがあります。それは、ラスサビの“嘆くな! 若者よ 今ここで 世界が僕達を待っている”という一文です。これ、仕事前に聴くと凄く元気を貰えるんですよね。
個人的に特に大好きなのは、後半の「世界が僕達を待っている」という部分。世界を待たせているのは「僕たち」なんです。「君」じゃない。
つまり彼らは、外の世界に身を置きながら、あくまで体勢はこちらを向いているということ。心に空いた風穴から、「こっちに来い!」と手を差し伸べてくれているのです(これのどれほど温かいことか!)。
そして、極めつけは“キラキラ光る空 夕暮れに出逢う 君のカタチ”。曲の最後の最後です。
「FUN CLUB」という楽曲は、「君」が踏み出した一歩に「出逢い」という特別な意味づけをしてくれます。それも、“キラキラ”や“夕暮れ”なんてドラマチックを携えて。
私はこの曲の最初から最後まで大好きですが、とりわけ上記のラストは格別に愛しています。読後感というか、聴き終えた後の余韻が本当に爽やかで、本来の意味での「青春」ドラマを見届けたかのような気分になるのです。
…ただまあ、私は今年で27歳なので、もはや「若者」では無いんですがね。笑
おわりに
不定期で、時間と気持ちに余裕があるときに更新していきます。あなたも同様、気軽にお立ち寄りくださいね。