新テーマ「水草図鑑」を始めると宣言したものの、どの種類から紹介すべきか迷っていました。最初の記事によって、このテーマの第一印象が決まってしまう訳ですので。。。
そこで、
①このブログで取り上げてきた日本淡水魚と多少関わりのあること
②ある程度知名度が高いこと
③飼育環境下での増殖品がある程度流通していること
④鑑賞価値があること
⑤ある程度育てやすいこと
の計5つに重点を置いて考えてみました。
そこで思いついたのが「ガシャモク」。
日本に自生し(絶滅寸前ですが)、
新産地が見つかればネットニュースになるほどの知名度があり、
多少増殖品が流通しており、
とても美しい見た目をしていて、
CO2の強制添加などをせずとも育てることが出来る。
最初に紹介するのにピッタリと感じました。
というわけで、今回はガシャモクについて紹介したいと思います!
和名
ガシャモク
学名
Potamogeton lucens L.
ssp. sinicus (Migo) H. Hara var. teganumensis Makino
この水草について
はじめに
日本のガシャモクは、Potamogeton lucens の亜種 Potamogeton lucens ssp. sinicus の変種 Potamogeton lucens ssp. sinicus var. teganumensis とされているそうです。
詳しい方が分かりやすくまとめて下さっているので、詳しくはこちらのブログを見て頂ければと思います。
↓↓↓
尚、青森県で近年発見されたガシャモクはその形態から狭義ガシャモクではないと考え、ここには含めませんでした。これについては後日書ければと思ってます。
狭義ガシャモクの形態
葉長5-12cm、幅1.2-2.5cmで1cm未満の極短い葉柄を持ちます。托葉はやや硬く、腐朽しません。果茎は直径2-3mm、花穂は長さ2-5cmで4心皮、果実は2-3mmで、冬は地下茎の先端に節間が肥大してレンコン状になった殖芽を形成して越冬します。
育て方
あくまで「僕はこうやってに育ててます。」というものなので、参考程度にという感じですが。。。
・低床について
植える容器に、下から順に、
けと土
↓
テトラ イニシャルスティック、Feエナジー等の肥料
↓
バーク堆肥
↓
バーク堆肥+赤玉土
↓
赤玉土(小粒か芝の目土を使うと余分な養分の流出を防げる気がしてます。)
というふうにしています。バーク堆肥+赤玉土の層と赤玉土の層に細かめの砂を混ぜるとより大きく育ちやすい気がしていますが、この組み合わせでも大きくなる時は大きくなるので、結局は肥料の問題かなと思っています。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240318/22/osakanabaka2021/40/c9/j/o1080063315414705829.jpg?caw=800)
また、ここにあげたような面倒くさい方法でなくとも、栄養系ソイルのみ、砂や礫に腐植質+肥料でも育ちます。ヒルムシロ属は多くの種類で水質やCO2の添加よりも低床環境に敏感なのですが、その点に関してガシャモクはかなり寛容なので、その分育成のハードルは低いです。
・照明について
ガシャモクは元々沈水植物でそれほど強い光を必要としないため、蛍光灯2灯程度でも十分育ちますが、私はアクロ トライアングル グロウを使うことが多いです。
・水温について
20-30℃程度であれば普通に成長します。15℃に届かない日が続くと成長が止まり、成長が止まりがちになり、逆に30℃を超える日が何日も続くとバテて弱ってくる印象です。
また、冬は加温をして23℃程に保ち、低床内が冷えないように鉢植えにしても成長が悪くなる時があるので、何かしら体内時計のようなものを持っているのだと思います。
・水質やCO2の添加について
ガシャモクは水質に寛容な為、水が極端に酸性や塩基性に傾いていたり、極端に硬度が低すぎたり高すぎたりしなければ大丈夫です。
CO2の添加は行った方が調子が良くなり、成長が早まりますが、殆どの場合、行わなくても問題ありません。
ガシャモクをはじめとするヒルムシロ属の水草はどの種も新しい水を好むので、水質を気にする前にとりあえず水換えを沢山するのが良いと思います。
・その他
ここで挙げた水槽での栽培の他、屋外の水鉢での栽培も可能です。
その他
ガシャモクを含むヒルムシロ属の水草は風媒花であり、また、同所に複数種が自生することが多いため、しばしば雑種が生まれます。
なので、今回は国内外から報告されている、広義ガシャモクと日本国内に自生する、或いは自生している可能性のある他のヒルムシロ属の種との雑種をいくつか紹介しようと思います。
Potamogeton × angustifolius(ツガルモク)
=P. gramineus(エゾヒルムシロ) × P. lucens
Potamogeton × salicifolius
=P. perfoliatus(ヒロハノエビモ)× P. lucens
Potamogeton × torssandrii
=P. gramineus(エゾヒルムシロ) × P. Perfoliatus(ヒロハノエビモ) × P. lucens
Potamogeton × jutlandicus
=P. praelongus(ナガバエビモ) × P. lucens
Potamogeton × nerviger
=P. alpinus(ホソバヒルムシロ) × P. lucens
Potamogeton × inbaensis(インバモ)
=P. malaianus(ササバモ) × P. lucens
Potamogeton × cadburyae
=P. cpispus(エビモ) × P. lucens
Potamogeton × fluitans
=P. natans(オヒルムシロ) × P. lucens
Potamogeton × subrufu
=P. nodosus ×P. lucens
参考文献
天野百々江・大野睦子・須田隆一・飯田聡子・角野康郎・小菅桂子,2008.北九州市お糸池における自然雑種インバモの起源と現状.分類,8(2):129-139.
大野睦子,1988.北九州の植物 (12) ガシャモク.わたしたちの自然史,27:22.
角野康郎,2014.ネイチャーガイド 日本の水草.326pp.文一総合出版,東京.
角野康郎・飯田聡子,2021.日本産ヒルムシロ属の雑種:研究の現状と課題.植物地理・分類研究,69(1):67―80.