虫が天敵から身を守るために擬態するように、僕は何から逃れるために今の自分になったのか。

大切に埋めておいた幼心は、社会が放った犬に掘り返されてしまったよ。


都会で迷彩柄が浮いている。
隣には臆病な現代カメレオン。
その後に続くハリボテ、ハリボテ、ハリボテ。
そんなこと考えているハリボテ。
僕は疎外感と劣等感を両腕にはべらせながら川に沿う。

ベルマークが切り取られたマヨネーズの袋。
気付かず踏んづけると、古い雨水が流れ出て雑草にかかった。
葉は、生きていくために必要な水をはじいていた。

ふと考える。
僕が最期に流すのは、血か涙か。
それとも……。

なんだか不安になって、近くの公衆便所に自分の電話番号を書き殴った。

誰でもいいから声が聞きたかった。
そう添える代わりに、番号の右下に『アンナ』とだけ加えた。
高校時代に好きだった人の名前が出てきたことに驚いた。

後日、本当に電話がかかってきた。
通話ボタンを押して耳を澄ませる。

おじさんの戸惑った声が聞こえた。
ひどく篭っていた。

僕は満たされた。
おじさんによって救われたのだ。

伝えたい。

言えない。

喋りたい。

失望させてしまう。

自分がアンナではないことが悔しかった。


そっと通話をきり、束の間佇んだ。

やがてフェードインしてくる子どもの笑い声を17時のサイレンが優しく遮る。
この街が僕にだけわかるように、ちょっぴりダラケている気がした。

その隙を突いてこっそり舌なめずり。
泪は血の味がした。
そしてアンナはいまも手首から涙を流しているのだろうか。

僕は自分の未来から逃れるために、このままおじさんが思い描いたあの子のスカートになりたい。




わい
『暗ッ。
いや暗いわ。
ほんでまた泣いてるやん笑
僕よ、どこぞのスカートよりわいのパジャマ1日体験コースおすすめ!』