まず、地方自治に関する言葉の意味さえ分からないという方は、

地方自治制度について学んで下さい。

このとき、賛成派・反対派の作った資料を見ると、偏った内容である恐れがあるので、

以下の総務省のHPで学ばれるのがお勧めです。

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/bunken/

 

 

さて、賛成派は二重行政の解消ができることを大阪市廃止の理由として挙げています。

維新のHPを見ると、基礎自治体と広域自治体の両方の権限を持つ政令指定都市の大阪市と、広域自治体である大阪府とで事務に重なりがあることを二重行政と言っています。

また、府と市がいがみ合っている状態(人間関係)のことも二重行政と呼んでいます。

 

まず事務の重複について、法律の観点から検証してみます。

地方自治法 第二百五十二条の十九

「政令で指定する人口五十万以上の市(以下「指定都市」という。)は、次に掲げる事務のうち都道府県が法律又はこれに基づく政令の定めるところにより処理することとされているものの全部又は一部で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる。」

(事務の各項目省略)

 指定都市がその事務を処理するに当たつて、法律又はこれに基づく政令の定めるところにより都道府県知事若しくは都道府県の委員会の許可、認可、承認その他これらに類する処分を要し、又はその事務の処理について都道府県知事若しくは都道府県の委員会の改善、停止、制限、禁止その他これらに類する指示その他の命令を受けるものとされている事項で政令で定めるものについては、政令の定めるところにより、これらの許可、認可等の処分を要せず、若しくはこれらの指示その他の命令に関する法令の規定を適用せず、又は都道府県知事若しくは都道府県の委員会の許可、認可等の処分若しくは指示その他の命令に代えて、各大臣の許可、認可等の処分を要するものとし、若しくは各大臣の指示その他の命令を受けるものとする。

 

長くなりました。要約すると、

1、指定都市は、法律や政令で定められた範囲で都道府県の事務を処理できる。

2、指定都市が事務を処理する際、知事の承認、許可、認可等の関与を要せず、又は知事の関与に代わり直接各大臣の関与とする。

指定都市の強い権限がお分かり頂けたと思います。

定められた範囲の事務は、大阪府に代わって、大阪府知事の関与なしで行うことができるのです。

したがって、「基礎自治体優先の原則」に立ち 、市が行える事務は市に権限移譲すれば、

法律上、知事が関与することはないので事務の面で二重行政は起こらないのです。
府と市でどちらが事務を行うのか曖昧な場合は、条例等で役割を決めればよいのです。
特に、今は維新が過半数のため、条例は容易に可決します。
 
(参考に、大阪のもうひとつの指定都市・堺市のHPをみると、「基礎自治体優先の原則」に立ち、 都市内分権を推進するとあります。

 堺市で二重行政が問題に挙げられないのは、知事が堺のことは堺に任せて関与していないからだと考えられます。

 https://www.city.sakai.lg.jp/smph/shisei/daitoshi_chihobun_koiki/chihobunkoiki/bunken.html)

 

 

 

次に、人間関係による二重行政を考えます。

府と市がいがみあっている(というか府が一方的に怒鳴り散らしている)という姿を私が初めて見たのは、
維新系の知事が誕生した時です。
それまで、二重行政という言葉を聞いたことがありませんでした。
知事は、「基礎自治体優先の原則」をご存じだったとは思いますが、
市の上に府があり、基礎自治体は知事に従うべきとお考えだったのでしょう。
自分の思い通りにならない怒りを他者にぶつけ、二重行政という言葉で表されたのだと思います。
したがって、人間関係による二重行政とは、
「基礎自治体優先の原則」に則り権限譲渡をしたくない権力欲の強い知事が、

基礎自治体に対して自治権を認めないことから生まれるものであるといえます。

基礎自治体に対して自治権を認めないという考えが根底にあるからこそ、
基礎自治体を廃止するという思想に繋がるのです。
 
まとめ
 二重行政と呼ばれるものは、「基礎自治体優先の原則」に則れば起こらないが、
 原則に反して、知事が基礎自治体に法外の介入をしようとした際に生じるものである。
 また、その根底には、権限は知事にあるべきで、基礎自治体に対してその権限を持たせないという考えがあり、
 それが、大阪市を廃止するという思想に繋がっている。