過去に歯磨き粉のCMで有名になったものの、最近は忘れ去られつつあるアメリカ人俳優フィリップは東京で暮らし、すっかり街になじんでいる。そこに、レンタル・ファミリー会社を経営する多田から仕事の依頼が。大切な「家族」を演じることで報酬を得る仕事らしい。最初のうちは、戸惑うフィリップだが、人々との交流を通して、いつしか彼自身の心に変化が起こりはじめるという物語だ。
「他者とのかかわり」「戸惑い」「いつしか心の変化」。何だろう、いわゆる起承転結の見本のようなプロット。さて、どんな作品に仕上がっているのだろう。
フィリップに「ザ・ホエール」でアカデミー主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザー。監督に「37セカンズ」の日本人監督・HIKARI。レンタル・ファミリー会社を営む多田に平岳大。その他に柄本明、森田望智、安藤玉恵らが出演している。このあたりの演技も見どころだ。
配給がディズニーなので、ありきたりのエンターテインメントだったら嫌だなとの思いもあったが、良質な作品に仕上がっている。フィリップが係わる人たちや仕事は、最初は生前葬の弔問客、親から独立したい娘の外国人花婿。やがて次第にかかわりが複雑になって来る。白人と日本人とのミックスルーツの少女の外国人の父親。これなんぞは、子どもと打ち解ければ「じゃあね」と別れられない関係となる。また、老俳優を力づける偽の映画雑誌記者としてのインタビュー。これも俳優と深い関係となり、事件を引き起こすことになる。だから、退屈している暇はない。
そして、外国人であるフィリップの小さな疑問なども、映画の中に宿題のようにちりばめられ、観客はそれを知る事で小さな歓びと出会うことが出来る。
エンターテインメント映画の嫌な部分は、観客が向かい合う結論が、往々にして単一な解釈を持つものが多いが、本作ではそのあたりは弱められ、観客がそれぞれの立場で向き合えば良いように作られている。だから、何らかの意味や価値観のプロパガンダにはなっていない。
私のような見方をする観客にも、それなりに安心して観られるのは、主人公フィリップが出来事と出会う、「映画の目」に徹して、フィリップ自身の事を述べないからだろう。それが良かったのかも。それを意識させるようにフィリップはマンションのベランダから、遠くに見える窓の中の人生を「見て」「想像」している場面も何度か出てくる。「考えなきゃ見られない映画は嫌い」という方にもお薦め。
2026年2月末公開。





