交通死亡事故の陳述書と朗読
現在,交通死亡事故を私個人の担当だけで4件受任している。
先月中旬,刑事裁判で遺族の陳述書を読み上げた。翌週,民事裁判用に2通,捜査機関への提出分3通を読み,短期間に6通の遺族の陳述書を読んだ。それぞれ遺族の悲しみは深く,精神的にかなり重たい状態になっている。
刑事裁判の法廷での朗読では,凄惨な事故だったこともあり,途中で涙ぐみ,声が震えてしまった。
弁護士として法廷で涙を流したのは2回目だが(1回目は独房に8か月拘留された被告人の冤罪事件で無罪判決を得た後),手続き中で陳述しながら泣いてしまったのは初めてだ。
------------
以前に事務所サイトでも紹介した通り,刑事裁判における被害者の意見陳述には2通りある。
・被害者参加制度に基づく意見陳述(刑訴法316条の38)・・・証拠にならない
・被害者の心情その他の意見陳述(刑訴法292条の2)・・・情状証拠になる
今回,朗読したのは,情状証拠にするための後者の陳述書だが,裁判官の指示で,被害者参加代理人が朗読することになった。
事前に読み上げの予行演習を事務所で行った際も泣いてしまい,法廷で読み上げた後は一層記憶に刻み込まれ,その後も思い出しては泣いてしまい,感情的に重い状態が続いている。
--------------
故人の生前の様子や,遺族との関係,遺族の気持ちなどを伝えるには,生前の写真や遺族の陳述書は効果がある。
他方,陳述書を作成する過程で,思い出すことも多く,遺族の気持ちが再度,傷ついたり,悲しみが刻み込まれたりする。
親族ではない弁護士でさえ,気持ちが塞いでしまう死亡事故・・・重たい事件だと,改めて思う。