獨り 敬亭山に 坐す

 
衆鳥 高く 飛び 盡し,
孤雲 獨(ひと)り 去りて 閒なり。
相(あ)ひ 看て 兩(ふた)つながら 厭(あ)きざるは,只だ 敬亭山 有るのみ。


※獨坐敬亭山:ひとりだけで敬亭山に坐って居る。


※衆鳥高飛盡:多くの鳥は高く飛び去り。


※孤雲獨去閒:ぽつんと一つだけあった雲も流れ去って、今はゆったりと落ちついて静かである。また、一つだけあった雲も作者のもとから去っていった。


※相看兩不厭:お互いに眺めあっていても、山と作者の双方とも少しもあきがこないのは。眺め続けていても、二つとも(「敬亭山」と「わたし」)あきないのは。ながめていても少しもいやがらないのは。


※只有敬亭山:ただ敬亭山があるのみである(ただ、敬亭山だけは(衆鳥や孤雲などとは違い)わたしをいやがってわたしのもとから去るということはしない。敬亭山のみがわたしの理解者である。)