「日本女侠伝 鉄火芸者」: 山下耕作監督
製作年 : 1970年
製作国 : 日本
配 給 : 東映
監 督 : 山下耕作
脚 本 : 笠原和夫
キャスト(役名)
藤純子・富司純子 (小しず)
佐々木愛 小いく)
弓恵子 ユミケイコ (仇吉)
伴淳三郎 (牧浦奇堂)
曽我廼家明蝶 (浅井喜一郎)
高宮敬二 (佐山信一)
安部徹 (安川重平)
藤岡重慶 (竹上兼蔵)
藤山寛美 (日舞の師匠)
山下義明 (箱長)
菅原文太 (小林勇吉)
(感想)
辰巳芸者の心意気を描いた女侠伝シリーズ三作目。男勝りの辰巳芸者小しず(藤純子)を軸に物語が展開していく。彼女が子供の頃に見ず知らずの男から受けた恩が忘れられず、10年たった今でもその男のために操を守ろうとする小しず。ありえない展開なんだけど、小しずの堂々とした振る舞いと男前の気風の良さに老獪でスケベな男も彼女の真摯な姿と必死な気合に押し切られていく。彼女の面倒を見ている表向きの旦那(米問屋・浅井喜一郎)は親分肌の度量の大きい男(これもありえない)そんな彼女を大きく包む。しかし浅井の商売敵の仇吉の旦那(米穀業・安川重平)が義心会の総長竹上や政界の黒幕と手を組み浅井を追い詰めてつぶそうとする。そんな時に小しずは、妹芸者(小いく)の夫の不始末をかばい自分の家を抵当にいれて妹芸者を助ける。カッコイイぜ。その肝っ玉の太さと面倒見のよさは人を惹きつけてやまない。しかし安川の悪事はエスカレートしてついに小しずの旦那の浅井は、にっちもさっちもいかなくなる。
こうなったら嫌な男でも頼るしかないと単身政界の大物牧浦奇堂伯爵(伴淳三郎)に捨て身の覚悟で相談しにいく。当然のように身体を求める牧浦奇堂。かんにんして下さい」私には思う人がいるんです。と目の前でかんざしで自分の腕をさす小しず。流れる鮮血。睨み付ける小しずにさすがのエロ親父の牧浦も感服して彼女を援護する側に。人間、必死になったらその勢いとド迫力で運命を切り開いていけるんだ。
これもありえない展開なんだけどなぜかお竜じゃない、小しず(藤純子)なら許せる。まわりがほっとおけなくなる。この人を助けなければ…という気持にさせる独特のオーラ全開で展開していく。しかし狂犬のような安川は汚い手をつかい地獄の底まで安井を追い詰めて、安井を闇討ちにしてしまう。(ここらは現実的)小しずの妹芸者もその夫も安川の手下に襲われる。逃げようとする輩に、小しずとその子分の芸者たちが囲んで「殺すなら殺せ。みんなが見ているよ」と啖呵を切るシーンは胸がすっとした。この映画は要所、要所に泣かせるセリフが散りばめられていて気がつけばこみあげるものが…。彼女を小さい頃に助けた男役の小林勇吉(菅原文太)の存在もこの作品の核となっている。
艶やかな小すずを影で支える、片腕のような頼もしい存在。彼女の気持を感じながらも、自分を拾ってくれた浅井の旦那の恩を思い、彼女を遠ざける勇吉。旦那を大切にしてください。と言い切る男に何とも言えない悲しい目で勇吉を見る小しず。そんな二人をみて自分は身をひこうとする旦那の浅井。恋の片道切符。堂々めぐり。
ありえない話だが(しつこい)登場する人物の信じられない人の良さ。そんな忘れていた「誠意」や「自分はどうなってもいい。好きな人が幸せになれば」という純情に胸が熱くなってきてまたまた、涙、涙。
しかし闇討ちにあった浅井のだんなの死に、眠っていた魂がゆり動かされて…。刀ひとつで安川の家に単身殴りこみにいく勇吉。背中のお不動さまが返り血をあびて、更に赤く燃え上がっていく。ついに安川を殺して静かに前のめりに倒れる勇吉。小しずの踊る姿が見えているかのように安らかな顔をしていた。
うううむ。ダイナミックな日本映画をみて満足だったので。文句なく★5つ
