「3つの約束」
チョコに急かされ、散歩に出かけた。チョコは小さな体でぐいぐいとリードを引っ張る。美咲は眠い目をこすりながらよろよろと歩いていると、向こうから大きな真っ白い犬がやってくるのが見えた。ノーリードだ。美咲は一気に目が覚めた。
(いやだ、こっちに来る。どうしよう、チョコがまた吠えちゃう・・・助けて!)
大きな真っ白い犬は、チョコの前でピタリと止まった。
(ドキドキ・・・あれ?チョコが吠えない。何で?)
「今、助けてって言ったでしょ。」
誰?今どこからか声が聞こえた。
でも、辺りを見回しても誰もいない。
私とチョコと、この大きな真っ白い犬。
(え?ちょっと待って。この犬しゃべった?)
「そう、僕だよ。あなたが困っているから助けに来たんだ。」
美咲は自分の耳を疑った。でも、この声は耳から聞こえてきているのではないことに気づいた。
(頭の中で聞こえている。もしかしたら心の中からかも知れない。)
「そう、心の声だよ。口から出るものだけが声ではないんだ。」
「私の声が聞こえるの?」美咲は驚きながら、小さな声で聞いてみた。
「うん。あなたの声も、この小さな犬の声もね。」その犬は心の中の声で答えた。
「あなた誰?一体何者?」
「僕の名前はフランチェスコ。動物と人間との通訳ってとこかな。あなたのように動物とのコミュニケーションに困っている人たちを助けているんだよ。」
フランチェスコ?ここは日本なのに、なんて変な名前なのだろうと美咲は思った。でもこの際、名前のことはどうでもいい。フランチェスコにチョコのことを頼んでみよう。
「本当?私のことも助けてくれる?私の名前は美咲。それからこの子の名前はチョコ。私、チョコのしつけのことで悩んでいるの。どうすればおりこうになってくれるかチョコに聞いて私に教えてくれない?」
フランチェスコはしばらく考えてこう言った。
「聞くのは簡単だよ。フムフム。あなたも困っているようだけど、チョコもとっても困っているそうだ。思い当たることはないかな?」
美咲は驚いた。「チョコが困っているの?なんで?」
「そう焦らないでくれよ。まず、知っておいてほしいことがある。人間は動物のことを誤解している。その誤解が解ければ、人間と動物はもっと仲良くなれるんだ。それを人間に伝えるのが僕の仕事なんだよ。僕と3つの約束をしてくれるなら、あなたの力になろう。」
「3つの約束?」
「そう。3つの約束だ。」
つづく
