スキルの習得について「情熱大陸」から考える | 井上正幸のブログ

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スキルを習得させるための伝統的な反復を要する方法に対して、あらゆる運動はズレ(ノイズ)は生じるが動きながら修正していくという「プロスペクティブ・コントロール」の考え方は面白い。
足場の悪い砂浜でのピッチングなど、スキル練習の序盤や中盤にバリアビリティ(制約)を加えても終盤にかけて乱れを修正しようとする力が働くというものだ。
例えば、バスケットボールの「レイアップシュート」で、相手とぶつかりバランスを崩してシュートを打ったとしてもリングに入れれるというのもこうした働きによるものだと考えられる。
このことは、事前にプログラムされたものしか実行できないので、練習では同じ動き(レイアップシュート)の反復を強いる伝統的アプローチでは説明ができない。
これは、相手のいるレイアップシュートのような「オープンスキル」だけでなく、フリースローのような「クローズドスキル」でも同じことが言える。

情熱大陸でスティーラーズの李承信選手がゴールキックの練習で「試合の状況を思いえがき距離や角度を変えた12箇所からゴールを狙う」「いつもと同じように蹴っていると思っても外れたりすりので、その日その日でつかんでいる感じ」と話していたが、これはまさに伝統的アプローチの否定である。

運動は筋肉、関節の自由度が高すぎるゆえ事前にコントロールできず、内的、外的変化に応じて動作を修正する能力が必要とされている。

「キックの場所を変える」は外的変化であり、「いつも同じように蹴っていると思っても外れるので、その日その日に掴んでいる感じ」は内的変化があることを自分で感じている証拠だと言える。
運動は「繰り返しのない繰り返し」であり、バリアビリティある練習をして、いかに「違いから学べるか」ということである。