今年11月24日で佐川一政が亡くなってから1年…

今日は佐川一政著「まんがサガワさん」を語りたいと思います。前半は非常に危険な内容なのでぼかしつつ書きます。漫画だけなのかと思いきやガロ系漫画家の根本敬の対談や佐川一政自身のエッセイも入ってて漫画とは銘打っているもののかなり彼の自伝・エッセイ的な側面が強いです。


【1】人を喰った話
この漫画は佐川がカービン銃で被害者を撃つところから始まる。その後被害者の骸を服を脱がせて自分も脱ぎ屍○したり○ったりしたあと解体し湖に捨てる計画だったらしい。しかし湖の美しい光景に見とれてた隙にタクシーの運転手に中身を開けられそのまま御用。ここで当時の日本の新聞紙の事件を報じる1ページが挟まる。
刑務所ではボランティアの女性に無視されたことに激怒し襲い掛かるも警官に取り押さえられ懲罰房に入れられたがそれでも懲りず(被害者を)スキヤキにしたかったという思いからSukiyaki(上を向いて歩こう)などを歌ってたらいつのまにか釈放されたらしい…がここで佐川一政の処刑が遺族に依頼された過激派私刑集団により執行されたとブラックジョークを交えつつも佐川一政はまだ世間の非難を浴びつつ生きてる!と体験談漫画を締めている。
この漫画でどうして白人女性を食べたがってたのも語られるため割りと序盤で事件の核心に迫っています(※犯人目線で)単純な絵と文章で一見簡素的ですが被害者の解体シーンや淡々とした語り口などはとても生々しいため、かなり見る人を選びます。あと本人やそれを取り巻く周りの人々の心理描写がかなり深く描写されているので実体験で残酷なのにかなり見ごたえがあります。ホラー漫画というよりは作者本人の実体験漫画なのでただ只管に猟奇!醜悪!エログロ!個人的な見解ですが彼は悪魔に魂を売ったのではなくて彼の魂そのものが悪魔…または地獄からの使者だと思ってます。


【2】サガワさんの交遊録
佐川一政がAV女優と対談してその後ビデオに出演させられたり
一般人の女性数名と交流したり夜を共にする様子が漫画で記されています。
天野小夜子や島田荘司、はては沼正三といった著名人とも交流がある様子がここでは描かれています。
沼正三氏お別れの会で澁澤龍彦や三島由紀夫といった故人から花輪が届いてるといったジョークが個人的にツボでした。




【3】エッセイ「喰えなくなった!!」
これは佐川が幼少期に人一倍病弱だったことや少年時代はおろか青年時代にお金や文学は自室にあっても漫画雑誌の類を買ってもらえなかった両親の束縛や束縛から逃げるためにパリに留学し留学生活を送る傍らターゲットを物色して事件を起こしたことをエッセイで綴っています。父親が事件を受けて会社の社長を辞任しフランスの判事を買収して佐川一政を精神病者扱いにすることで日本での逮捕は免れたが家のお金がなくなりそのころフランスの精神病院で佐川が初めて書いた自伝本「霧の中」がベストセラーを記録し印税の大金が入ってて退院後驚いたと語っています。
日本に帰国(強制送還)後は精神病院に送られ外出が可能になると女遊びをしていたそうです。退院後もしばらくはとある一般人の女性と交際を続けていたそうですが週刊誌に載って父親に大目玉を食らい辞めたそうです。
その後も別な白人女性と関係を持っては週刊誌が来たりしたそうです。
最後はとある西洋人女性と旅行に行ったことを語っています。根本氏による佐川氏の挿絵がいちいち汚い(下ネタ的な意味で)個人的には良くも悪くも女たらしなんだなぁって思いましたね。



【4】何故?
佐川本人の性的嗜好やカニバリズムになった経緯を精子(比喩ではない)からカニバリズムの妄想から強迫観念になり犯行に至る前日譚までを漫画形式で描いてます。個人的には愉快とも悪趣味ともとれます。ギャグとシュールの中間地点というか…そんなマンガです。



【5】神様の手※根本敬氏との対談
佐川氏が漫画をまともに読んだのは青年期の頃らしくそれまでは自給自足で漫画を書いてて根本氏は佐川氏に漫画はサインペンで書けといったぐらいで特に指導はしてないそうです。それであの迫力は個人的にすごいなと思います。根本敬氏曰く佐川一政氏は存在がシュール極まりない人らしい…(確かに○人して無罪判決でのうのうと生きてるのが不思議な、でも時代に翻弄された内のひとりだと管理人も思う)対談最後の両者の「無意識は怪物だ。芸術家は常にそれと対峙して時に発狂したり、死んだりする。そしてそれを支配するのが神様の手なんだ。全ては因果鉄道の旅、神様の掌の上で起こっているんですね。(原文ママ)」という名言を抜粋する。これは個人としてはものすごい刺さった。犯罪者とかガロ系漫画家とかは関係なく全ての芸術家や漫画家を目指す人へのエールだ。この対談は読んで損はないと思うので芸術家・漫画家を目指す方はみんな一度は見といたほうがいい。(漫画本編は好みの問題なので見るか見ないかは自由だけど)

【6】あとがき
「僕はアウトローか。人を殺めて喰ったんだから、そうに決まっている。でも正直のところ、自分ではそう思ってはいない。結構イイ奴なのだ。涙もろくて人には礼儀正しい。そういう風に教育されたのだ。でもアウトローになってしまった。何故か?それは、絶対0度の孤独の罠に嵌ってしまったからだ。氷河のクレバスに足をとられてアイスブルーを見てしまったのだ。こいつは怖い。そういう孤独に遭遇した時、人は鬼になる。(原文ママ以下略)」
これに関して管理人が思うこと。一人の芸術家を見た気にも鬼を見た気にもなる。そしてあとがき最後に書いてある地に墜ちた救済の天使は晩年彼の前に現れたんだろうかと思った。

【総評】
個人的評価…評価不能
ここで記されてるとおりの人生を歩んだとしたならば確かに非難されるわなと思った一方で幼少期に文学や芸術に触れていて自伝を過去に書いてあるだけあって文章能力はかなり高いし(素人ブロガーの管理人とは比べ物にならないくらい書き方が上手い)絵もエッセイも分かりやすくて読み物としても結構面白い
ただ…この漫画は猟奇殺人犯が書いた実体験ものということを頭の片隅には入れといたほうがいいです。

快楽的でもあり悍ましくもある怪作、アングラ・サブカル好きな人や犯罪史マニアや珍品コレクターが絶賛する理由がこれを執筆するために改めて全部読んだらよくわかりました。

11月24日追記:オークラ出版版(初版)とトカナブック
ス版(復刻版)の違い

2019年に佐川のドキュメンタリー映画「カニバ パリ人肉事件38年目の真実」公開の際1000部限定で復刻したこの猟奇マンガであるがオークラ出版版と細かな違いがあるので紹介していこう…。

・オークラ出版版はカバー裏表紙に佐川氏が『喰った』被害者の写真が写っている、グロテスク、猟奇的すぎるのでここでは載せないがトカナブックス版にも裏表紙がデータ紛失により再現不可能だった代わりにオークラ版の裏表紙のプリント(本に収まるサイズ)が付属している。

・帯の宣伝文句が初版と復刻版で異なる、本の厚さや色味もやや違う。(ページ内の色は同じ)
左がオークラ版で右がトカナ版
オークラ出版版よりもトカナブックス版のほうが表紙が色鮮やかな気がする。トカナ版はオークラ版より薄いけどちゃんと内容は全部収録されてた。

※日焼けとかじゃなくて元々こんな色です。

【出版に携わったスタッフとおことわり】




【佐川一政逝去から1年が過ぎて管理人が思ったこと】
もう1年も経ったのかと思うと驚きを隠せない。こういうシュールな猟奇殺人犯もいるんだなということを教えてくれた根本敬氏とニコニコ動画に感謝。

【関連リンク集】




↑の記事で復刻版に関しては佐川一政氏への謝礼金などは一切出しておらず赤字覚悟で出版したと語られているから目を通してくれ

【続編記事書きました↓以下からどうぞ】



では今回はこの辺で…
執筆日時:2023/08/某日
追記・修正日:2023/11/24
2024/1/31

追記・修正するにあたって一部の画像を追加したり詳しく説明したりしました。