☆Xmas作品ラブコメ 小説「命あずかります」第一話 患者の鑑 | orizuruブログ

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保護した仔猫の成長記録♪生死をさ迷って・・・

わぁー

(ヘ;_ _)ヘ ガクッ

ここまで来てしまいましたぁー
あと半月程で新年が来てしまいますね。。。
毎日忙しいおすえー
このまま新年を迎えてしまいそうで、怖いですぅー



久しぶりのデーモン一家
アリス君(左)強気の姿勢が続いてましてぇー
兄弟はみんな気を使ってます(^_^;)
子猫の時の性格とは雲泥の差!
猫の世界もランさんが溺愛した為なのか?
アリスは我が儘な子になってしまったようですぅー



ともかく、みんな元気に年を越して欲しいと願っていますぅー
そろそろChristmasプレゼントも買わないと☆
kumiさんの愛猫ちゃん、姫ちゃま(^^
ゆきも同じ物をあげようと思っていますぅー
誰が一番興味を持つのか?楽しみですね!

以前お話しした小説をアップしておきますぅー
やはり本をめくるあの感覚が良いのですが(-_-)
ここでは望めませんからぁー
いっき書きになってしまいました(汗)
超忙しい時期、どうぞスルーして下さい。。。



第一話


「いましたか?」


「いいえ、何処にも」


「屋上に倉庫、書庫はどうですか?」


「全て調べましたがいません」もう一人も同じように返事をしました。


「あの小娘が……」そう言い放つと一番年長者らしい女性が忌々しいと唇を噛みました。


「13号も消えたそうです」


「そう言えば、休憩室にあったクッキーもなくなってました」


額に汗を掻きながら命令をされて探している二人が、この年長者に答えると。


「それでは、後はあそこだけ」三人は顔を見合わせて頷き合うと、足早に地下へと続く階段を下りて行きました。


「さくら、ここいいでしょう」


「暗くて冷たくて、夏はここが一番涼しくて快適なんだから」


「はい、これあげるわね」


ポケットから出したクッキーの袋を破ると、ケースの中にいる赤い目の生き物に与えました。


「あなたも食べますか? そっかー、もう食べれないですね」


先ほどの三人組が地下にある一番奥の重たそうな扉の前に立つと。



 〔霊安室〕



勢いよく開けた扉から、引きずり出された白衣の女。


「先生、いい加減にして下さい。 何度もコールしたのに出ないし院内から姿をくらますわ、何度目ですか」


「それに無菌室で育てられた実験用動物まで勝手に持ち出して、今回は理事長に申し上げますからそのおつもりで」


「婦長さ~ん、もうしませんから」


「だめです、あなたのようなだらしなくて、風紀を乱す研修医には出ていってもらいますから」


「じゃあ、ネズミをこちらへ」


「あーっ、さくら! この仔どうするんですか?」


「実験用には使えませんから、処分します」


「わぁー、待ってー」必死にゲージにしがみつく手に誰かの手が後ろから重なりました。



そこに立っていたのはこの総合病院のスーパー医師、風見 空。
脳神経外科の若きホープであり、病院中の女性の羨望の的になっている医師で理事長の息子。

殺気だったその場の雰囲気を一瞬にしてバラの花園にしてしまった、風見医師に手を借りながら立ち上がった彼女は南野 みき。
極度の近眼に乱視で、その辺に捨ててある輪ゴムで束ねられたバサバサの髪にヨロヨロのしみだらけの白衣。


「みき先生でしたね、来週からうちの科だったと思うけど」


「はぁー」


「じゃあ、このネズミは僕が預かっておくからね」


そう言い終わると後ろ向きのまま、手を振りながら行ってしまいました。



午前中の診察時に数時間だけ任されている内科へ戻ったみき。
上がり症で人見知りが災いし、外来患者とも上手くコミュニケーション出来ない彼女でしたが、いつもマイペース。


「次の患者さんどうぞ」


入って来たイケメン男性を見てフリーズしてしまい下を向いたまま「じゃあ、洋服をちょっと、前を拝見します」

 
聴診器を当てると「ずいぶんと骨が出てますね」


そばにいた看護師に「先生、そこ背骨ですよ」


「アヒーッ」


今日はこれでおしまいです、先生。


「腹減ったー」そんなみきの机の上にドサッ!


「まず先生の書かれたカルテの、この訳の分からない宇宙文字を全て書き直して、データ入力もしておいてくださいね」婦長の嫌味な顔。


「アヒーーッ」机に崩れ落ちました。



次の週、世間でトップクラスのランク付けをされている脳神経外科に配属されたみき。


「宜しくお願いします」


 プーン


「ねぇー、臭くない?」


看護師と医師達が鼻を押さえて、口々に言いながらみきの方を見て「お風呂いつ入ったの?」


「えーっと、まだ6日ぐらい前だから、大丈夫です」


「大丈夫な訳ねえだろう」


研修医、つまりレジデントと呼ばれているみき達の場合、睡眠時間は3時間程で夜勤をした後に続いて日勤をこなしてフル稼働はごく当たり前でした。


覚えなくてはいけない事はいっぱい、机上には山積みされたままの書類や本が崩れかけている有り様。
特に当直の夜などは急患に来てもらいたくないと祈る思いでした。

 
運悪く当直医師でいた先輩の場合、腹痛の患者が搬送されて来ても何せ専門が麻酔科ですから初見が定まらず、一晩中「朝まで生きててくれ」と祈り続けたそうで。
レジデントの大切な任務は、翌朝担当医師が来てくれるまで何とかして患者を生かしておくのがお仕事なんです。


ミーティングも終わりに近づいた時、風見医師が入って来ました。
東京スカイツリーのような長い足、美男でその溶ろけるような笑顔に周りの看護師全員が虜状態です。


ちらっとみきを見る風見医師、みきは軽く会釈しました。


「今日これから入院する患者さんがいますから、採血や検査の準備をお願いします、たぶん手術になると思うので」


「じゃあ、よろしく」また、みきをちらっと見てナースステーションを出て行きました。


「さっさと仕事をする、脳神経外科も人員不足なんですからね」婦長が睨みました。


「何処へ行ってもお荷物なのよね、あの先生」ヒソヒソ話がみきにも聞こえました。



しばらくすると車椅子に乗せられた男性患者やって来ました、そばには見るからにヤクザ風の男が二人。


「病室に案内せえ」


「こ、こちらです」


「なんじゃー、この部屋は、個室にせえ個室に」


「い、今この病室しか空いてないんです」と恐々答える看護師。


「親分、どうしやしょう?」


「まあ、しょうがねえな、しばらくの事だ」


「へぇー」


親分と呼ばれる男がベッドに移ると、子分はペコペコと頭を下げました。
その病室は集中治療室の隣りで、手術されたばかりの患者が多くいる特別な部屋でした。


ナースステーションでは「ねぇー、誰か採血に行ってよ」
ところが、誰もが忙しいのを口実に断わるので思案する婦長の目に入ったのが、部屋の隅で掃除をしている、みき。


「先生」


「あーっ、はい」


「4号室の龍家さんの担当をお願いします」


「えっ? 私にですか? 患者だ」はじめての担当患者にウキウキする、みき。


『落ち着いて大丈夫だから』と自分に言い聞かせながら病室に入ると「血抜きに来ました、違ったわ、採血しに来ました」


「なんじゃ、お前」子分達が肩をいからせて威嚇します。


「今日から担当させて頂く、南野です」


「女の医者か、他におらんのか?」


「じゃあ、消毒しますね」


「わぁーっ! ぶっとい注射器」子分と抱き合う組長。


「これは窓辺の花鉢のお水遣り用です、癒されますよね」


「紛らわしいことするな」


腕を繁々と見て「絶対に動かないでくださいね、命落としたくなかったら」


「親ぶ~ん」子分達が叫びました。


 ブスッ!


右、左、深く、浅く、針が血管を探す事15分、注射器の中にどす黒い血がぱっと入って来ました。


「終わりましたよ、あれ? 気絶してる」


「それにしても内出血もないし、我ながらパーフェクト」


 パシャッ! 


白衣から携帯を取り出すと注射針が刺さったままの腕の写真を撮りました。


この部屋に徳爺さんがいます、開頭手術2回のつわものです。
レーザーや内視鏡による手術もありますが、開頭の場合右利きの人は左側を手術する場合が多く、正面から顔を見ると半円を描くような傷跡が額部分に残ります。


徳爺さんの場合は左右両方の額に手術跡がありました。
手術の直後は頭部や顔全体が腫れて頭痛も酷いのですが、徳爺さんは同室の人達とは違って「痛い」と言わない患者でした。


ただ難点は……


看護師が血圧測定に来て、握力を調べる為に握手を求めるといつまでもその手を離さないことです。


「若い娘の手はいい」スリスリ


「いつまで握ってるんじゃー」



ナースステーションに戻ったみきは憧れの風見医師と細かい検査内容の打ち合わせを済ませると、再びあの組長のいる病室へと向かいました。


「親ぶーん、また来やしたぜ、あの女医者」布団を被る組長。


「龍家さん、これから検査室へゆるく行きますから」そう言うと、ストレッチャーに寝かせました。


「早くさっさとやってくれ、トロトロするな」


「そうですかぁー、じゃあ」と言ってベルトをギュッと締める、みき。


ストレッチャーが廊下を動きはじめて部屋の角を曲がった瞬間、加速。



 ビュー ビュー

 カシャ カシャ


軋む車輪の音を響き渡らせながら、廊下を疾走するストレッチャー。
右側の杖をつく患者さん避け、左側にいる車椅子の患者さんをよける為に、壁を蹴ってストレッチャーで側面壁走行、猛スピードで激走するみき。


目を回す親分……


広いエレベーターホールでスピンターン、一番端にある黒いボタンを押してそのまま地下2階へと降りて行くと。
再びスピードを上げて狭い廊下を激走し続け、開いている検査室の中へストレッチャーを押しやりました。

 
「俥先生、フルコースでお願いしまーす」



小一時間程して息絶え絶えで病室へ戻ったこわもての組長は「ありゃー、医者じゃね、おっそろし」


そこへ30代の美しい女性が入って来ると子分達が「あねさ~ん」
見るからに水商売風の色気が漂う女性です。
病室に似つかわしくない厚化粧「お前達、ちゃんと組長の面倒みてるんだろうね?」


「どうしたんだい? そんなに振るえてあんた。だいたい抜歯の為に麻酔注射するだけで怯えるんだからね、男だろ立派に死に花咲かせておくれよ」


「冗談じゃね、こんなとこにいられるかってんだ、けえるぞっ」


ちょうど検温に来た看護師が、帰る身支度をしている組長に気付いて直ぐに医師を呼びました。


「龍家さん、動かないで下さい」風見医師がそう言うと。


「先生、退院させてもらおうか」


「それは許可出来ません、検査の結果血腫が見つかりましたので早急に手術して摘出しましょう」


威勢の良かった組長の顔面が真っ青になって、そのままベッドにへたり込んでしまいました。
部屋の中を見渡せば頭に管を通して唸っている患者ばかり、びびるのも当然です。
数日後、詳しい造影検査の結果手術日が決まった組長は、とてもおとなしく看護師の言う事を聞くようになりました。



そして徳爺さんの退院する日、6人部屋のそれぞれの患者さんに退院の挨拶を済ますと。
組長のベッドへも来て「これは7年前の手術跡で、こっちは今度手術した傷跡ですよ」


組長はいきなりベッドの上でぴょんと飛び跳ねて正座をしました。


「はやく良くなると言いですね、どうぞお大事に」


徳爺さんの指差す頭を真剣に見入っていた組長は「お疲れさまでござんした」と手をついて深々と頭を下げました。


部屋の入り口でもう一度みんなに軽く会釈をすると、徳爺さんは廊下をスタスタと歩いて行きました。


「優等生だったわね、あの患者さん」
 

看護師とみきがその後ろ姿を見送る中、徳爺さんが振り向いた時です。
頭の傷跡がまるで孫悟空の金冠のように光って見えました。


その日の夕方、病院の正門を出てバス停へと歩いていたみきの肩の上に、突然ぽつぽつと雨が降って来ました。


「雨だわぁー、あのバス停、屋根なしだったんだっけ」


突然何かが頭の上に覆い被さったと思ったら、傘でした。
後ろを見ると、そこには笑みを浮かべた風見医師がいて。


「あっ、先生」


「今、帰り?偶然だね」


いつもの爽やかイメージに顔を赤らめる、みき。


雨粒が大きくなりはじめたところへ、ちょうどバスが来ました。
談笑しながら乗り込んだみきと風見医師。


バタバタッ


バス停に駆け込んで来た人影。
それは走り去ってしまったバスを口惜しく見送る看護師達でした。


「見たぁー? 今の二人。風見先生よね? であの女はみき先生じゃない?」


もう一人もその言葉に深く頷きました。


「でも、風見先生って車通勤だったわよね。今朝駐車場に車があったし」


「えーっ……?」


「まさかぁー」


「風見先生って変態好き?」


恋の予感を乗せて、バスは雨上がりの虹の中をゆっくりと走って行きました。




(あ と が き)


小説に出て来るヤクザさん。


もちろん実際にあったお話です。


庶民は見た目は弱気者かもしれませんが、本当は心強気者かと思いました。


お読み頂きまして、誠にありがとうございます。

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